【第121回】《寄り道コラム》

人の一生には、どのくらいのお金が必要??

2023.09.13

人の一生には、どのくらいのお金が必要??

 前回コラムでは、日本の「お金」の歴史についてお伝えしました。物々交換の不便さを解消する便利な道具として誕生した「お金」は、現代を生きる私たちには必要不可欠なものの一つで、日常のさまざまな場面で使われています。
 では、いったい人は、一生のうちにどのくらいのお金が必要なのでしょうか・・・・・・?お一人おひとり思い描くライフプランとそれに対応するマネープランはそれぞれですので、当然ながら実際には一人ひとり異なりますが、今回は《寄り道コラム》としてこのテーマを深掘りしてみたいと思います。

「人の一生」はどれくらいの長さ?

 「人の一生」はそもそもどれくらいの長さなのでしょうか。ご存じの通り、日本は世界に冠たる長寿大国です。日本の平均寿命をみてみると、2022年時点で、男性81.05歳、女性は87.09歳となっており、今後も延びていくと推計されています。また、国によって平均寿命は異なりますが、世界全体としても今後、延びていくと推計されています【図表1、2】。
 長寿化は日本に限らず世界のトレンドであり、高齢期の健康面や資産面での課題をクリアすることは、世界中誰もが取り組まなければならない点として注目されています。

図表1 さまざまな国の平均寿
図表2 世界の平均寿命の推移と推計

 また、平均寿命は0歳時点での平均余命(確率的にあと何年生きるか)を示したものですので、最も亡くなる人が多い年齢=「死亡年齢最頻値」とは乖離があります。日本における死亡年齢最頻値は、2022年時点で男性は88歳、女性は93歳となっていますので、「一生のうちにどのくらいのお金が必要なのか?」を考えるにあたっての「人の一生」は、平均寿命よりも死亡年齢最頻値の方がより実感のある値になるかと思います。

一生のうちに必要となるお金は・・・?

 ここでは想定をしていくにあたり、次の前提を置いて考えたいと思います。

  • ・大学卒業後、22歳で就職
  • ・初婚年齢の男女平均より30歳で結婚(夫婦は便宜上、同じ年齢)
  • ・64歳まで勤務
  • ・65歳からは無職世帯となり、日本の死亡年齢最頻値である夫88歳、妻93歳まで存命

(この前提を見て、「自分には全く当てはまらない!」と思われた方。そうですね、だからこそ自分なりのライフプランとそれに対応するマネープランが大切だということが、一層、お分かりいただけるのではないでしょうか。)
 そのうえで、総務省の家計調査のデータから各世代の収入と支出の平均額をつなぎ合わせ、合計したのが【図表3】です。

図表3 家計での収入と支出

 収入の合計は、3億7,808万円、支出の合計は2億9,261万円という概算値となりました。単純な収支差だけを見ると、「8,547万円のプラス」ですが、以下の点を考慮する必要があります。

収入面では…

  • ・現役時代、どのような働き方をするかによって収入額が異なるのはもちろんのこと、退職後に受け取る年金についても、現役時代のライフスタイルや働き方によって受け取れる額には違いが生じます
  • ・30歳~64歳の試算に用いている二人以上の勤労者世帯のデータにおいては、世帯の中の有業人員は、全世代平均で1.79人。世帯の中で何人働くか、どのような就労形態かによっても違いが生じます
  • *世帯員のうち勤め先のあるもの,自営業主,家族従業者,内職従事者などの人数

支出面では…

  • ・【図表3】は、あくまで「月々の平均支出」を合計したものとなるため、例えば住宅購入時の頭金や諸費用、リフォーム費用、教育費用、車購入費用、旅行費用…など、一時的に平均支出を超えてかかる費用については、十分反映できていないため、上記に加えてかかる費用として見込む必要があります
  • ・足元、インフレが進んでいるため、今後の生活費は今時点よりも多くかかるということも想定されます

 実際、金融広報中央委員会が実施している「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」の2022年調査を見ると、世帯で保有している金融資産の平均額は、50歳代で1,253万円、60歳代で1,819万円という結果となっており、やはり上記の概算値は収支ともにより保守的にみる必要があると思われます。

 ただし、いずれにしてもみなさんの人生において“億円単位”でお金が必要になることには間違いありません。これだけ大きなお金をただ漫然と使っていくだけではなく、自らの幸福感や充実感につながる「お金との付き合い方」を見つけることが大切なポイントかと思われます。