【第55回】高校生向け金融教育
2022.04.06
暖かい春が近づいてまいりました。春といえば、新生活が始まる方も多いのではないでしょうか。またこの春、2022年4月1日からは民法の改正により成年年齢が20歳から世界的な標準でもある18歳へ引き下げられましたので、新成人になられた方もいらっしゃるかと思います。
さて実は、この4月から高校生の授業において内容の拡充が図られたものがあります。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、その内容とは「金融教育」です。先日、みんなのマネーコラムでも本内容について簡単に取り上げましたが、少し詳しく見てまいりたいと思います。
ところでみなさん、「金融教育」と聞くとどういった内容をイメージされますか。具体的に想像がつかない方も多いのではないでしょうか。実際にミライ研が2022年1月に1万人の方に対して実施したアンケート調査で、以下のような内容をお伺いしたところ、「お金について」とかなり間口を広げてお伺いしたにもかかわらず、受けたことがあると回答された方は極めてわずかで、7割超の方は受けたことがないと回答されました【図表1】。
これまで、社会人に対する「金融リテラシー」を備えるようにする教育は金融業界を中心に様々なされてきたものの、学生に対して本格的には取り組みがなされていなかった「金融教育」。そこにこのタイミングで日の目が当たり、拡充が図られることとなったのはなぜなのでしょうか。その底流には大きく3つの理由があると考えられます。
1つ目は、冒頭にもお伝えした通り成年年齢が引き下げとなり、「成年年齢」について改めて意識されたことにあります。民法が定める成年年齢には、①一人で契約をすることができる年齢 ②父母の親権に服さなくなる年齢 という2つの意味があります。特に注意すべきは①の点です。例えば、高額商品の購入やクレジットカードの作成、ローンを組むといった行為も、成年になりさえすれば法律上は自身の意思のみで正式に契約することができるようになります。しかし成年年齢が18歳であれ20歳であれ、一般的には「契約」に対する知識や経験は十分とは言えません。トラブルを回避するためにも、学生のうちに消費者教育を含む「守り」の金融教育を受けておくことが重要だと改めて捉え直されました。
2つ目は「人生100年時代」の到来です。今まで以上に多様な価値観、働き方、人生観等が認められるようになった今節の社会においては、人生100年時代をどの様に彩っていくのかは各人が考えるべき大きな課題となっています。また、日本人の平均寿命が延びいわゆる老後生活が長くなる一方で、公的年金への不安やかつての様な経済成長や賃金の上昇が見込まれないとなると、これからを生きる若い人たちは早いうちから計画的に資産形成に取り組む必要性が高まっています。主体的な人生設計を行いそれに沿ったマネープランの形成やお金とのかかわり方を認識しておくことは、個々人の「生きる力」を高め、ひいては社会の豊かさにもつながるといった「攻め」の金融教育が、これからはより求められる時代となっています。
3つ目は諸外国に比べて日本の金融リテラシー度は低いという結果が出ている点です。先に挙げた「守り」「攻め」の金融教育の十分な理解には、基本的な金融リテラシーの向上は必要不可欠と認識されつつあります。
では、実際に学生たちはどの様な内容を学んでいるのでしょうか。次回のコラムでは学校で金融教育の中核をなす「金融リテラシー」について、詳しく取り上げてみたいと思います(今まで「金融教育」を受けたことのない方、必見です!)。