【第44回】1万人アンケート調査より①

コロナ禍で私たちの「時間的なゆとり」と「資産形成意識」はどう変わった?

2022.01.05

コロナ禍で私たちの「時間的なゆとり」と「資産形成意識」はどう変わった?

 ミライ研では、昨年に続き、20歳~64歳の男女約1万人の方を対象とした独自アンケート調査:「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2021年)を実施しました。今回の調査では、前回調査の質問項目をおおむね継続しつつ、追加で、コロナ禍における家計行動の変化などについてもお訊きしました。
 この結果をベースに、「コロナ禍における時間的なゆとりの変化と資産形成」について分析しましたので、7回シリーズでご紹介します。<分析結果のプレスリリースはコチラ>
 初回は、コロナ禍において、「時間的なゆとり」や「資産形成について考える機会(考える時間)」がどのように変化したかについてです。

時間的なゆとりが「増えた」人は2割強

 まず、コロナ禍によって、私たちの暮らしの中の「時間的なゆとり」がどのように変化したかをみてみます。
 アンケート調査で、コロナ禍における時間的なゆとりの増減を、「1日当たり3時間以上増えた」~「1日当たり3時間以上減った」の7択(図表1の凡例ご参照)でおたずねしたところ、「変わらない」が7割(70.7%)と圧倒的に多く、「増えた」が合計で2割強(22.1%)、「減った」が同1割弱(7.1%)という結果でした。「増えた」人の中には、「1日当たり3時間以上増えた」人も8.7%いました。

図表1 コロナ禍による時間的なゆとりの変化(1日あたり)(n=10,920)

 お読み下さっている皆さんは、この結果(この比率)をどのように感じられたでしょうか。
 筆者自身は、時間的なゆとりが「増えた」人が2割強というのは、「予想していたより少なかったな」というのが正直なところです。
 テレワークやリモート授業の普及で、多くの人の通勤・通学時間が減ったことは間違いないですし、これにプライベートでの外出自粛も加わり「おうち時間」が増加したことは広く認識されているところでしょう。
 また、内閣府が6月に発表した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」でも「今回の感染症の影響下において、労働時間はどのように変化しましたか」という問いに対し、「増えた」が8.9%、「減った」が47.0%、「変わらない」が40.2%という結果が出ています。

 こうした点を考え合わせると、個人的には、時間的なゆとりが「増えた」人が少なくとも3割、なんなら4割近くいてもおかしくないと思っていたのですが、アンケートの結果をみると、必ずしも「おうち時間の増加=時間的ゆとりの増加」ではなかったことがうかがわれます。
 実際、周囲にヒアリングをしたら、「自分だけでなく家族も在宅時間が増えたので、全員分の食事の支度をして、子供の面倒を見て、配偶者にもかまってあげて、、、でかえってゆとりが減った」という人もいました。

うち4割が、資産形成について考える機会が「増えた」

 さて、コロナ禍の下で生じた「時間的なゆとり」は、「資産形成について考える機会(時間)」の変化-「資産形成に対する意識」の変化と言ってもよいかもしれませんが-にどう結び付いたのでしょうか。
 アンケートで、時間的なゆとりが「増えた」と回答した人に対し、「資産形成について考える機会(時間)」がどう変化したかを「増えた」~「減った」の5択(図表2の凡例ご参照)でおたずねしたところ、最も多かったのは「変わらない」で半数以上(56.8%)を占めましたが、「増えた」と「少し増えた」も合計で4割近く(38.7%)に上りました。【図表2】の赤く囲ったところです。

図表2 コロナ禍による資産形成について考える機会(時間)の変化(n=2,423)

コロナ禍で約1割の人の資産形成意識が向上

 時間的なゆとりが増えた人が2割強(22.1%)いて、このうち、資産形成について考える機会が増えた人が4割弱(38.7%)ということなので、
22.1%【図表1】×38.7%【図表2】=8.6%
で、アンケート回答者全体の1割弱が、コロナ禍をきっかけに資産形成について考える機会が増えたとみることができるでしょう。

 コロナ禍で、テレワークへの移行や外出自粛などにより「時間的なゆとり」が生まれ、この結果、約1割の人の資産形成意識が向上したということです。不自由な生活、経済的な打撃、医療の逼迫など負の側面が目立つコロナ禍ですが、この部分については一定の評価をしてよいのではないでしょうか。

(再掲)図表1(再掲)図表2

 次回からは、コロナ禍における「家計行動」の変化についてみていきます。