【第42回】

抜かりのない死後の手続き&財産の承継

2021.12.22

抜かりのない死後の手続き&財産の承継

 前回のコラムでは、安心できる終活のポイントとして、終活やることリストの作成を採り上げました。今回は、終活やることリストのうちの死後の手続きと財産の承継について、エンディングノート、死後事務委任契約、遺言書の活用をご案内します。

図表

エンディングノートへのアウトプット

 あなた自身が死後の事務手続きや直接的に財産の承継対応を行うことはできませんので、お元気なうちにこれらの希望をアウトプットしておく必要があります。アウトプットの手段はさまざまあり、例えば家族や友人に口頭で伝えておくこともその一つですが、考えを整理し、必要なポイントを押さえておくには、やはりエンディングノートを活用するのが良策でしょう。
 エンディングノートの書式は自由なため、さまざまなタイプのものが市販されていますが、ネットでダウンロードできる無料のものもあり、手軽に利用できます。

  • タイプ別エンディングノートの例
  • ・葬儀の段取りや相続への想いを書く欄が充実したもの
  • ・家族や周囲の人々へのフリーのメッセージ欄が多く配置されているもの
  • ・終末医療の希望に特化したもの
  • ・自分の一生を振り返る年表などが配置されたもの
  • ・取引金融機関の一覧やSNSのパスワードなど、生前の備忘録としても活用できるもの

 可能であれば、複数のエンディングノートを比較し、遺された人に何を伝えたいのかを整理したうえで、ご自身の目的にあったものを選びましょう。
 なお、エンディングノートを上手に書くポイントは、あまり気合いを入れ過ぎないことです。はじめから全部書き切ろうとせず、気になったところから徐々に埋めて、定期的に見直したり書き足したりしていくと良いでしょう。

エンディングノートの実効性

 考えを整理するのに大変便利なエンディングノートですが、エンディングノートには、あなたの死後に家族や周りの人々を従わせるほどの強制力はなく、無視されるリスクがあることも想定されます。
 もちろん、エンディングノートの記載内容が尊重される効果も期待できますが、のこされた人々の善意次第ということになります。そもそも、エンディングノートが発見されないという根本的なリスクもあるでしょう。
 そこでポイントとなるのが、エンディングノートの記載内容の実効性を担保する死後事務委任契約の締結と遺言書の作成です。

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死後事務委任契約の締結

 死後事務委任契約とは、あなたが亡くなった後のさまざまな手続き(死後事務)を誰かに代行してもらうための契約です。通常、委任契約は当事者の死亡によって終了しますが、死後事務委任契約では、「委任者の死亡によっても委任契約を終了させない旨の合意」をすることで、死後も有効な契約として活用することができます。
 なお、死後事務委任契約の対象範囲は死後の手続きに関してです。財産に関することは、民法において遺言と相続の制度が定められているため、死後事務契約の対象とすることはできません。一部、家財整理の際の動産の形見分けなどのグレーゾーンもありますが、ケースバイケースで対応されているようです。
 エンディングノートの記載事項のうち、葬儀、埋葬、家財の整理、クレジットカードや公共料金の整理、未払金の精算などの死後の手続きは、死後事務委任契約を締結しておくと安心です。
 なお、死後事務委任契約の委任先の候補は弁護士、司法書士、事業会社、団体などさまざまですが、手続の分野によって契約主体を分けても管理が複雑化するため、できるだけ広い範囲を取り扱っている先に纏めて委任する方が簡便でしょう。

遺言書の作成

 遺言書は、あなたの死後の財産を誰にどのように配分したいかという意思を伝えるものです。遺言書がある場合には、原則としてあなたの意思に従った財産の配分が行われます。なお、実際に遺言書の内容に従った財産の配分実務を行う者を「遺言執行者」といいますが、予め信頼できる遺言執行者を指定しておくことは、安心できる財産の承継を実現するうえでの重要ポイントです。
 遺言についての詳細は、以下のコラムもご参照下さい。
 第38回 確認しておこう!遺産と遺言
 第39回 確認しておこう!遺言の活用法

 以上のように、終活においては、如何にしてエンディングノートに記した希望の内容を実現させるのかという視点を持つことが必要です。
 次回のコラムでは、実際に死後に発生する手続きを概観しながら、終活準備をしている場合としていない場合とを見比べます。