【第38回】
2021.11.24
今回のコラムでは、「遺産の分けかた」についてみていきたいと思います。
「遺産」という字は「産(財産)」を「遺す(のこす)」ことだと解釈できますが、現代の日本の風潮として、「財産ありき」で、「遺す」部分については、(意識面では)やや疎かになっているとの指摘があります。
疎かというよりも、まずは「法定相続」ありきで、被相続人(亡くなられた方)の意思へのリスペクトが薄くなってきているのでは、というトーンかと思います。
一方で、どれくらいの方々が「遺す」意識を形にされているのでしょうか?「遺したい想い」を明確な形にすることが「遺言」だと思います。意外と知られていないのですが、「遺言制度の趣旨」は、財産を残す方の意思を尊重するためのルールであり、相続人のための制度ではないということです。「亡くなる方の最後の想いを尊重する」が、遺言の制度趣旨となっています。
特に、相続人が複数になる場合には、「遺産の分けかた」がとても重要です。ここで揉めますと「相続」が「争族」になってしまいます。そうならないためにも、遺産分割協議による分割と、遺言による分割とでは、どういった点が違っているのか、【図表1】で確認しておきましょう。
たとえば、次のような事例があったとします。
長年、仕事の関係で環境問題に取り組まれてきたAさんは、「私の財産の全てを、地球温暖化防止に携わっている公益社団法人に遺贈する」という遺言書を遺していたとします。相続人は子であるBとCです。この遺言は、相続人であるBとCの「法定相続分」を考慮していない内容ですが、このような遺言も有効です。遺言は、Aさんの生前の最後の意思を尊重するための制度だからです。ここで「B・Cの権利はまったく無い」のかというとそうではありません。遺留分という制度があります。
遺留分は、相続人に保障される最低限度の財産のことです。遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額の請求権を行使することができます。ただし、遺言を無効とする権利ではありません。遺留分制度は、あくまでも「遺言をのこした人の意思」と「相続人の法定相続分に対する期待」を調整するために設けられているからです。法定相続分と遺留分の割合は【図表2】を参考にしてください。
翻って(ひるがえって)みて、現在、どれくらいの方々が「遺す」意識を形にされているのでしょうか?
次回のコラムでは「遺言の活用法」をみていきたいと思います。