【第100回】家計における“住まい”の比重①

〜 平成から令和で住宅ローンはどう変わった? 〜

2023.04.05

〜 平成から令和で住宅ローンはどう変わった? 〜

 おかげさまを持ちまして、今回で、当コラム(ミライコラム)は第100回を迎えることができました。お読みいただいております読者のみなさまに厚く御礼申し上げます。人間で「100歳」ですと「百寿(ひゃくじゅ・ももじゅ)」の年祝いとなりますが、当コラムは「週次更新で2年経過」という状況です。大河ドラマは週次ドラマで今年60年を迎えるそうですので、ミライコラムも第100回は「通過点」とさせていただき、200回、300回を目指してまいりたいと思います。
 さて、今回のテーマは、今、注目度が高い“お住まい事情”についてです。平成から令和で、どんな変化が見られたのか、を2回にわたってお届けさせていただきます。

1.平成から令和へ:住宅ローン借入額はどう変わったか?

 当研究所が実施した「住まいと資産形成に関する意識と実態調査(2022年)」アンケート調査において、住宅ローンを利用して自宅を保有した2391人に、「住宅の購入時期」と「購入時の当初ローン借入額」について尋ねたところ【図表1】の結果となりました。
 今の40歳代で1992~2001年に住宅を購入した人の借入額は平均2,412万円でしたが、2012~2021年に購入した人の借入額は平均2,725万円と約300万円増加しています。
 現在30歳代で住宅購入した人の借入額でみても、2002年~2011年に住宅を購入した人の借入額は平均で2,532万円でしたが、2012~2021年では平均3,079万円で、約500万円の増加が確認できました。

図表1 住宅保有者(住宅ローン利用)の当初住宅ローン借入額(平均値)~住宅の購入時期で比較

2.「平成」は、所得は伸びず、さりとて住宅価格は右肩上がり

 現在の30歳代、40歳代は平成時代に社会人として世に出た年代です。
 おおよそ30年間の平成時代において、「世帯所得」と「不動産価格の動向」の変化を10年ピッチで眺めてみたのが【図表2】です。

図表2 平成年間の「世帯平均所得」と「不動産価格の動向」

 1世帯あたりの平均所得金額をみると2000年は平均616.9万円でしたが、2018年は552.3万円と金額で64.6万円、比率で約1割減少しています。一方、首都圏の新築分譲マンションの1戸あたり平均価格は、2001年に4,026万円だったものが、2021年は6,360万円と2,334万円も上昇しており、2001年比で1.6倍となっています。
 一方、消費者物価の平成時代の動きを見てみますと、1998年から2013年の消費者物価の上昇率は、15年間のうち10年間がマイナスであり、全国消費者物価指数(1998年=100)は2013年に96.53にまで低下しています。2013年3月、日銀総裁に黒田氏が就任し、超異次元金融緩和をスタートさせ2014年には 2.7%の急上昇を見せましたが、その後はおおよそ0.3%~0.8%の上昇で推移してきました。
 「平成」は、世帯の所得は伸びなかったものの、消費者物価が安定していたことで家計面での逼迫感は緩和されていたと考えられます。しかし、その中で住宅価格は上昇し続けてきています。こういう視点でみますと、「住まいの購入」は他のライフイベントと比して、個人の家計にとっては「より大きなイベント」となってきていることがうかがえます。

 次回のコラムでは、ライフイベントとして従来よりも重くなってきた“住まい”にどう向き合っていくかについてお届けいたします。