【第94回】シンガポール通信

〜 インフレへの処方箋とは? 〜

2023.02.22

〜 インフレへの処方箋とは? 〜

 3回に亘ってお届けする、シンガポールの経済・暮らしに着目した“シンガポール通信”の2回目です。執筆は昨年からシンガポール支店に赴任しているミライ研の研究員が担当します。

迫りくるインフレ、どう対応する?

 個人、家計で実施できる範囲で、インフレへの対策はどうすればよいのでしょうか?インフレでモノの値段が上昇すれば、家計を圧迫します。最初に思い浮かぶのは、節約・節制ではないでしょうか。つまり「支出を抑制する」ことです。とはいえ、奢侈品ならまだしも、生活費を抑制するには限界があります。
 もう一つは、「収入を増やす・資産を増やす」という方法です。副業やキャリアアップで収入を増やしたり、物価上昇に応じて価値が変動する資産を持ったりすることです。
日本では昨年11月に 「資産所得倍増プラン」が公表され、12月には倍増プランの「第一の柱」であるNISAの抜本的拡充や恒久化が発表されました。資産形成への学びや取組み意欲が高まってきている読者の方々も多いのではないでしょうか。
 資産形成のはじめの一歩を踏み出すために、ミライ研ではYouTube動画も配信していますので、コラムとあわせてぜひご覧ください。

つみたてNISAの始め方
つみたてNISA 運用商品の選び方

シンガポールでのインフレ対策とは?

 シンガポールにおいては、政府として、家計として、どのようなインフレへの対応策がとられているのでしょうか。シンガポールでは、政策として、インフレ影響を緩和するために、金融引き締め(政策金利ではなく、自国通貨の為替レートの誘導目標を定める金融政策)が行われています。同時に、総額15億シンガポールドル(約1500億円、1S$=100円)規模で法人・個人向けの支援が実施されています。以下は一部抜粋ですが、電力価格の高騰に対する支援や、給与引き上げに向けた各種支援がなされています。

図表1

 現金支給もさることながら、注目したいのは累進給与補助金制度(Progressive Wage Credit Scheme)です。これは、国民(永住権者含む)の昇給の一部を政府が負担する、企業の賃上げを政府がサポートする制度となっています。
 低所得者累進賃金モデルの導入移行に向けて、昨年2022年に導入され、2026年まで継続される予定です。(※シンガポール政府は、低所得者の給与底上げのために、低所得者層の多い職業についてそれぞれ最累進賃金モデル(Progressive Wage Model、実質的には最低賃金モデル)を設定しています。)

 日本と単純比較することは当然できないですが、インフレは生活への影響が非常に大きいので、賃上げで対応しようとする政府の本気度がうかがえます。
 日本では、春闘の時期を迎えていますが、物価上昇に負けない賃上げ実現が望まれます。次回は、寄り道コラムでシンガポール人の資産形成事情をお届けします。

twitter
facebook
line
pagetop