【第84回】日本の金融リテラシー事情
2022.12.14
前回のコラムで続くとなっていた、アメリカの調査での、「受ける機会があり、自分は受けた」と回答した2割の方に更に問いかけた設問が以下です。
○いつ「金融教育」を受けましたか
○合計で何時間「金融教育」を受けましたか
まず、いつ「金融教育」を受けたかは以下の結果となっています。
アメリカでもやはり若い年代は、高校でとの回答が高くなっています。アメリカでは1990年代前後から「金融教育」に関する様々に取り組みがなされてきましたが、2003年に金融リテラシー向上を目的とした政府横断の組織「金融リテラシー委員会(FLEC:Financial Literacy and Education Commission)」が設立しています。ただし「教育」に関しては、日本のように文部科学省が「学習指導要領」という方針を決めて全国に統一された基準を示すのではなく、各州等に権限がありそれぞれに非営利団体等の協力のもと基準を決めて取り組んでいます。有名な団体としてはジャンプスタート(Jump$tart)が挙げられます。
また金融教育を受けた時間に関しては以下の結果となっています。
いずれの年代においても、半数以上の方が「10時間以上」と回答されている点には驚きました。一方で、金融教育はライフステージやその時の環境に応じて必要となる内容やレベル感が異なってきますので、数時間学んで終わりというよりは学び続け、結果として10時間以上というのは当然のことともいえます。
さらに、この時間数について高校時代における金融教育の時間数を確認する意図で、「高校時代にのみ金融教育を受けた人」について調べてみたところ、【図表3】の結果となりました。
先ほどもお伝えした通り、「教育」に関してはアメリカ国内全体で統一された基準はなく、各州が基準を設けているため幅が出るかと思いましたが、やはり半数以上が「10時間以上」と回答しました。
日本の高校における金融教育は、家庭科のなかに主として位置付けられ進んでいます。高校家庭科は「家庭基礎」と「家庭総合」の2つのいずれかを選択して実施することとなっており、高校1~2年生の過程の中で家庭基礎は週2時間、家庭総合は週3もしくは4時間となっています。当然、家庭科の科目の中で学ぶ内容は衣食住を柱とし保育や高齢者問題など多岐に渡りますので、実際に2年間の中で消費者教育を含めた「金融教育」に占める時間数は、目安として家庭基礎は6時間程度、家庭総合は10時間前後となっています。アメリカの水準にはやや及ばないかもしれませんが、高校生のうちに土台を作るという意味で、量の面ではベターな水準といえるのではないかと思います。
ただし「金融」については、高校の授業で学んで終わりではなく社会人になってからも学び続けることが重要かと思われます。社会人になってからのお話は、次回コラムにて。