【第81回】

「信託」が持つ力

2022.11.23

「信託」が持つ力

 以前【第40回】《寄り道コラム》「信託銀行ってなにもの?」にて私たちが働いている信託銀行の業務内容、その商品について紹介させていただきました(是非そちらも併せてご覧ください!)。
 そして本年は、日本において「信託法」と「信託業法」が制定されて100周年となる節目の年に当たりますので、改めて「信託」が持っている機能や「信託銀行」としての役割、「信託」を活用した商品・サービスについてお話させていただきたいと思います。

「信託」の起源と現代における機能

 信託とは、「信じて託す」と記載する通り、自分が持っている大切なお金や土地等の財産を、信頼できる人に託し、自分が決めた目的に沿って大切な人や自分のために管理・運用・処分を行ってもらう、という制度となります。
 全容を触れさせていただくにあたって、その起源についても紹介させていただきたいと思います。信託の発祥については、様々な説がありますが現状有力とされているのは、13世紀頃、イギリス十字軍が戦地へ赴く際に、残していく家族のために、自身の領地や財産の管理や運用を第三者に託し、そこで生まれた利益を家族のために給付してもらっていたこととされています。その後19世紀頃にイギリスで信託法が制定され、日本でも1900年頃から、信託会社が設立されていったという非常に古い歴史を持っています。日本では1922年に「信託法」が制定されており冒頭でもお話したように、今年2022年が「信託法」制定100周年、となるわけです。

 もともとは信託財産の管理や承継を目的として成り立った制度ですが、現在では財産を管理する機能だけでなく、「転換機能」、「倒産隔離機能」といった複数の機能を持ち、個人の資産管理のための「信託」から、社会貢献にも活用される「信託」と、活躍の幅が非常に広くなってきています。

 「転換機能」「倒産隔離機能」と聞いても、初耳という方も多いかと思いますので内容を噛み砕き紹介させていただきます。
 「転換機能」とは、信託された財産を「信託受益権」という一つの権利に転換し、その目的に応じて形を変えたり分けたりまとめたりする機能です。具体的にはこの機能により、信託された小口のお金をまとめて大きなお金として運用することや、不動産などを権利化することで流通しやすくさせる、といったことが可能となります。
 「倒産隔離機能」とは、信託された財産は委託した人の倒産の影響を受けず、委託された人の相続財産や借金の強制執行の対象にもならないという機能です。この機能により、信託された財産は外部の影響から守られ、委託した人の想いをきちんと残していくことが可能となります。
 これらの機能を活用しながら、「信託」は様々な商品・サービスに形を変えながら、私たちの生活に深く関わっています。

日常で活用される「信託商品」

 日常生活において「信託」が関わっている場面を少し覗いてみたいと思います。皆さまが資産を貯めたり、増やしたりする際には、小口の資金をまとめて大きな資産として運用する、「投資信託」として信託が利用されています(こちらは比較的言葉馴染みがあるかもしれません)。また、皆さまの資産を管理する信託として、その仕組みは企業年金などにも活用されています。皆さまの大切な資産や想いを次の世代につないでいく際には、「遺言信託」や、「教育資金贈与信託」として信託の機能が活用されています。その他にも、ご自身での意思判断が困難となった際には成年後見人を支えるための「後見制度支援信託」、家族間での資産管理や承継をスムーズにする「家族信託」、社会貢献サービスとしての「特定寄附信託」など、「人生100年時代」といわれる中、様々な社会課題に対するソリューションを提供できる金融機能を持った、現代にマッチする形の「信託」が数多く登場しています。
 ちなみに、三井住友信託銀行としてはさらに、「おひとりさま信託」、「ハウジングウィル」、手続代理機能付信託である「人生100年応援信託(100年パスポート)・(100年パスポートプラス)」といった複数の商品・サービスラインナップを取り揃えながら皆さまの想いにお応えしております!

想いを形にする「信託」

 「信託」と聞くと、一見馴染みの薄いようなイメージを持たれるかもしれませんが、社会の中では意外とたくさんの場面で「信託」が登場しています。多様化するライフステージの中で、皆さまの大切な財産や想いを形にして守っていくために、様々な機能を兼ね備えながら活用される、それが「信託」が持つ力というわけです(我々信託銀行も管理を任される身として、非常に大きな責任感を持って日々働いております)。
 皆さまも、一度ご自身の回りでも「信託」という言葉に注目されてみると、意外なところで発見されるかも・・?

 また、「信託」に関するより詳細な内容や、当社での「信託商品・サービス」ラインナップの詳細ついては、ミライレポートとしても掲載させていただいておりますので、是非併せてご覧いただけますと幸いです!