【第47回】1万人アンケート調査より④
2022.01.26
今回のお題は、コロナ禍における「資産形成額」です。コロナ禍に明け暮れた2020年1年間に、どれぐらい資産形成できたか、コロナ禍以前と比べどう変わったかについて、アンケート調査の結果を元にまとめました。
ミライ研が実施した1万人アンケートで、「1年間にどれぐらい資産形成できたか」を訊いた結果が図表1です。
1世帯当たりの年間資産形成額は、平均するとおよそ112万円でした。
金額階層別の分布をみると、最も多かったのは「1万円以上50万円未満」ゾーンの世帯で全体の4割弱(38.0%)、続いて「50万円以上100万円未満」世帯が2割強(22.6%)となっていました。「差し引きゼロ」、つまりこの1年資産形成が進まなかった世帯も1割弱(9.5%)ありました。
中には1年間に「500万円以上1,000万円未満」とか「1,000万円以上」資産形成したというツワモノ(?)世帯もあり、これらに引っ張られて「平均」の資産形成額は3ケタ(100万円)をゆうに超えていますが、実際に年間資産形成額が3ケタに届いている世帯は3割に留まり、5割弱の世帯が「50万円未満」となっています。
次に、年間資産形成額がコロナ禍以前と比べてどう変化したかをみてみました。結果が図表2です。「増えた」人と「少し増えた」人の合計が12.4%で8人に1人、「減った」人と「少し減った」人の合計が25.1%で4人に1人、「変わらない」人は62.6%となっていました。
つまり、コロナ禍に見舞われ、以前より年間資産形成額が「減った」人が「増えた」人の約2倍いたということです。
ただ、2020年の日本の家計の年間貯蓄総額は、過去にもほとんど例がないほど急増したことがわかっています。
内閣府の発表によると、2020年1年間の家計貯蓄総額(貯蓄残高の増加額)は35.8兆円で、前年の約5倍。貯蓄率も11.3%に急上昇しました【図表3】。
どちらの数字も、1995年以降では最高(過去最高は1994年の37.1兆円、12.3%)。2020年は、実は四半世紀ぶりの「貯蓄大増加イヤー」だったということです。
読者の皆様の中には、なぜ資産形成額が「増えた」人より「減った」人の方がずっと多いのに、マクロ統計ではこんな結果になっているのか?と違和感を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
このカラクリを一言でいうと、「意図せざる貯蓄増加の発生」ということになろうかと思います。
「一律10万円の定額給付金の支給」に「コロナ禍における消費控え」が重なって、使われないでそのまま預金口座に残っているお金が増加し、能動的・積極的に「資産形成をしている」という自覚がないままに、無意識のうちにお金が貯まっている—これが35.8兆円、11.3%という数字を生んでいると考えられます。
もちろん、資産形成額が「増えた」人には100万円、200万円単位でどーんと増えた人が多く、「減った」人には5万円とか10万円程度減った人が多かった可能性もあり、これが家計貯蓄総額の増加を後押ししたという推測も「あり」かもしれませんが、アンケートでは具体的な「増減金額」まではお訊ねできておらず……ウラ取りできずに歯噛みする刑事の心境であります。