【第106回】安心ミライへの「資産形成」ガイドブックQ&Aより
2023.05.31
「バブル経済」「インターネット」「携帯電話」「SNS」「人工知能」「ウェルビーイング」……。人類は絶えず進化を続けており、その流れは世の中における価値観や特徴を生み出し、その時代を生きる人々に意識的・無意識的に大きな影響を与えています。2023年においては、価値観は多様化し、一人ひとりが自分らしさを追求する時代に突入していますが、それを考えるにあたっても、これまでに歩んできた時代の価値観や経験を完全に切り離すことは難しいのではないでしょうか。
ここからの4回シリーズでは、現在30歳代、40歳代、50歳代の方が歩んできた時代背景や各世代の特徴をマクロ的な視点からお伝えしたいと思います。是非、「確かにそんな時代もあったよね~」「話には聞いていたけれど、本当にそんな時代だったのね!」など、ご自身のこれからをイメージしていただくにあたって少し振り返って眺めてみてください。
(本シリーズは、安心ミライへの「資産形成」ガイドブックQ&Aに掲載した内容を再構成しお伝えさせていただきます。)
現在30歳代以下の世代は、1980年以降、日本において少子化が進行するなかで生まれ育ちました。いわゆる「1.57ショック」の年である1990年に生まれた人を含む30歳代の人口は1,366万人で、現在40歳代の人口1,741万人のおよそ5分の4にとどまります。また、20歳代の人口は1,267万人とさらに少なくなっています。
この世代には、育ってきた時代背景や受けてきた教育を反映したいくつかの特徴がみられます。
この世代は、少なくとも物心がついて以降は右肩上りとはほぼ無縁の経済環境のもとで、多くが「ゆとり学習」を受けて成長しました。そのせいか、総じてガツガツしたところがなく物事を達観してみる傾向があり、「ゆとり世代」「さとり世代」と呼ばれます。
この世代は、「デジタルネイティブ」という側面も持ち合わせています。現在30歳代半ばの人たちが中学〜高校生の頃、20歳代の人たちが幼稚園に通っていた頃にはインターネット普及率が5割を超えており【図表1】、これに関連したメディア・サービスを子供の頃からごく当たり前に利用してきました。
彼らが社会人になる頃には、終身雇用や年功序列の賃金制度など日本的経営慣行からの脱却が始まっていました。また、エンジェル税制の拡充など資金が潤沢でない若者でも起業しやすい環境が整いつつあります。このため、「スキルと知識によっては新入社員で年収1,000万円」など、年上世代と比べ若いうちから稼げる人も現れており、比較的早い時期から世代内における経済格差がつきやすい世代となる可能性があります。
就業観についても、1つの企業で働き続けるという意識が薄かったり、勤務地も東京にこだわらなかったりなど、過去の世代と比べ柔軟な人が多いようです。
就業に関しては、共働き夫婦比率、なかでも2人揃って正規雇用者として働く夫婦の比率が高いことも特徴です。現在30歳代の夫婦の64.7%が共働きであり、うち26.5%は夫婦ともに正規雇用者として働いています。10年前、現在40歳代の人たちが30歳代だった頃の共働き夫婦比率は51.1%、正規雇用者夫婦の比率は17.7%であり、共働き化の進展が明らかです【図表2】。
共働き夫婦の増加は、経済的な必要性や法制面の整備による部分も大きいですが、教育制度の変化も影響しているでしょう。女子のみの必修科目であった家庭科が、中学校では1993年度から、高等学校では1994年度から男女共修となったため、現在40代半ばより下の世代は男女ともに家庭科を学んでおり、ジェンダーギャップ意識が相対的に希薄といわれます。
さて、このような時代背景を持つ30歳代以下の世代は「お金まわり」にはどのような特徴がみられるのでしょうか。そちらに関しては次回コラムにて。