【第59回】《寄り道コラム》

「平均寿命」と「死亡年齢最頻値」はどう違う?

2022.05.18

「平均寿命」と「死亡年齢最頻値」はどう違う?

「平均寿命」と「平均余命」

 「人生100年時代」という言葉は、今の日本において、かなり定着してきた言葉のように思います。2017年に首相官邸において、当時の安倍首相を議長とする「人生100年時代構想会議」が発足し、これ以降、政府だけでなく民間においても「人生100年時代」という考えやワードが広まってきました(余談ですが、その後、岸田内閣において、内閣官房の分室であった「人生100年時代構想推進室」は2021年11月に廃止されています)。
 ライフプランを考える上でも「自分はいったい何歳まで過ごせるのだろうか?」というライフエンドに向けたイメージを持つことは、とても大切な要素です。そういった際に、よく使われるのは「平均寿命」ですが、最近は「死亡年齢最頻値」という数字も使われることが多くなってきています。今回の寄り道コラムは、この「平均寿命」と「死亡年齢最頻値」について考えてみたいと思います。

 まず、平均寿命をみてみます。【表1】【表2】は、厚労省が2021年に公表している「令和2年簡易生命表」のデータです。【表2】に令和2年(2020年)の平均寿命が掲載されていますが、男性は81.64歳(前年比+0.23歳)、女性は87.74歳(同+0.29歳)となっています。ここ50年間で、ともに約12~13年、伸びてきており、過去の最高値を更新中です。
 ここで、「平均余命(へいきんよみょう)」について確認しておきたいと思います。「平均余命」とは「ある年齢の方が、この年齢以降に生きる年数の平均」です。【表1】は主な年齢における平均余命ですが、「0歳時点の平均余命(令和2年)」を見ていただくと、男性:81.64歳、女性:87.74歳となっています。「あれれ、どこかで見たような数字では。。。」と思われた方、その通りです。先ほど【表2】でチェックした「令和2年の平均寿命」と一緒です。つまり、いわゆる「平均寿命」とは、「0歳時点の平均余命」のことなのです。「平均」ですので、平均寿命以上に存命される方も半分いるということを表しています。こう考えますと「今●歳である人は、あと何年くらい存命なのか」を考える際の目安としては、「平均寿命」よりも「平均余命」の方が相応しいと言えるでしょう。
 例えば、現在60歳の男性の平均余命は、【表1】をみると「24.21年」ですので、平均としては「60歳+24年」で「84歳あたり」でお亡くなりになる、ということを表しています。

表1 主な年齢の平均余命(令和2年)
表2 平均寿命の年次推計

「死亡年齢最頻値」とライフプラン

 一方で、生活の中において、周りの「亡くなった方の年齢」を拾い上げていくと、ともすれば「平均寿命より長生き」された方が多いかも知れません。
 「平均寿命」は「若くして亡くなる人」も含めての「平均」ですので、生活の中での寿命イメージよりも短く感じることはあると思われます。そこで最近は「死亡年齢最頻値」が使われるケースが増えてきました。「死亡年齢最頻値」は、厚生労働省の簡易生命表データの中で「最も死亡者数が多かった年齢」のことです。「平均」は「分布」なのですが、その分布の「山」となっている部分は何歳かをデータ上で表しているのが「死亡年齢最頻値」であるとも言えます。足もとで男性88歳、女性92歳となっていますので、平均寿命よりも4年~6年程度、高齢になっていますが、生活の中での実感とすると、こちらの方が近いのではないかと考えられます。

 では、ライフプランやマネープランを考える際に、こういった数字をどう使えば良いのでしょうか?
 一般的に、ライフプラニングにおいては、「寿命までに老後資産が枯渇するリスク(資産寿命リスク)」に備える観点から、平均寿命より長めに計画することが望ましいといわれています。一方で、「人生100年時代」だからといって「100歳まで計画する」ことに対して(ちょっと長いのでは?)という肌感を持つ方も多いように思います。そういった際に、「死亡年齢最頻値」は、自分の周りを見回しても「これくらいで亡くなられているな」との実感を得やすい数字といえます。
 ライフプラン、マネープランを立てる上では、お一人おひとりが「自分ごと」として考えることがとても大事なことです。そういった観点で「死亡年齢最頻値」は「老後資金について計画してみよう」と思っていただきやすい数字であり、老後資金準備に向けたマインドセット(心構え)を促す数字であると考えられます。

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