【第50回】1万人アンケート調査より⑦
2022.02.16
前回は、コロナ禍による「時間的なゆとり」の変化と「資産形成意識」の変化を年齢を軸にして分析し、どちらついても変化が最も大きかったのは20歳代の人たちだったことをお伝えしました。
今回は、「資産形成に向けた行動」と「現実の資産形成額」の変化について、やはり年齢別にみてみたいと思います。
まず、コロナ禍における資産形成に向けた行動の変化を年齢別にみてみましょう。
食費の節約やポイ活などの「家計面の工夫・努力」、預貯金や投資信託の購入などの「資産形成行動」、NISAやiDeCoなどの「優遇制度の利用」の3つの家計行動いずれについても、コロナ禍をきっかけに始めたことが「ある」と答えた人の比率は20歳代で最も高く、年齢が上がるほど低下していく傾向が見られました。
コロナ禍をきっかけに始めた「家計面の工夫・努力」が「ある」と答えた人は、20歳代では5人に2人強(43.2%)、30歳代以上では30~35%と10ポイント前後の差がついています(図表1の)。
コロナ禍をきっかけに始めた「資産形成行動」が「ある」人は、20歳代では4人に1人強(27.0%)いますが、30歳代以上では徐々に比率が下がり、60歳代では1割に(同)。
コロナ禍をきっかけに利用を開始した「優遇制度」が「ある」人は、20歳代では6人に1人(16.4%)ですが、同じく30歳代以降比率が低下し、60歳代ではわずか3.3%となっています(同)。
「食費の節約」、「預貯金」、「NISAの利用」といった個別の行動に分けてみても同様で、全ての項目(行動)において20歳代の比率が他の年代を引き離してトップとなっています。
例えば、20歳代では、コロナ禍をきっかけに食費の節約を始めた人が15.7%(図表2の)、ポイ活や預貯金を開始したり、家計簿をつけ始めた人も1割以上いました(同)。
つみたてNISAを利用し始めた人は8.0%に上り、第5回でお伝えした「20歳代における口座開設数の激増(1年間で2倍に)」と平仄が合う結果となっています(同)。
とは言え、20歳代はそもそも家計運営をスタートして日が浅く、コロナ禍以前から家計簿をつけたりNISAを利用していた人はあまりいないはずだから、コロナ禍をきっかけに開始した人が多くなるのは当たり前なのでは?という思いもよぎりますよね。
アンケートの結果データを確認したところ、「資産形成行動」と「優遇制度の利用」については確かにその通りでしたが、「家計の工夫・努力」については、コロナ禍以前から行っていた人の比率も相対的に高くなっていました(20歳代の実施者比率は、食費の節約と家計簿はトップ、ポイ活は30歳代に次いで2位)。バブル崩壊後に生まれ、右肩上がりとは無縁の経済環境で育ってきたこの世代、文字通り「お若いのになかなかしっかりしてはる」ようです。
話を元に戻します。
前回、「20歳代には、他の世代と比べ資産形成意識が高まった人が多い」とお伝えしましたが、意識が高まっただけで終わらず、資産形成に向けた実際の行動も最も活発化した世代であると言えるでしょう。
次に、コロナ禍以前からの資産形成額の変化について、やはり年齢別にみてみます。
年間資産形成額がコロナ禍以前より「増えた」人の比率は、20~30歳代の若い世代で15%前後と相対的に高く、40歳代以上では年齢が上がるにつれ低下していき、60歳代では1割を切っています【図表3】。
これまで本シリーズでご紹介してきたアンケート調査の結果や、つみたてNISAの口座開設数にも表れているように、20~30歳代の若い世代では、コロナ禍で資産形成意識が高まった人や資産形成に向けた行動(資産形成の種まき)が活発化した人が相対的に多いことが明らかであり、これが年間資産形成額の増加に結び付き始めている可能性があります。
中でも、20歳代の人たちは、コロナ禍によって資産形成の意識・行動両面を後押しされた代表格ともいえ、彼らの資産形成額の今後の動向は要チェックと思っています。