【第43回】

死後の流れと終活準備

2021.12.29

死後の流れと終活準備

 前回のコラムでは、エンディングノートに記した希望の実現について、死後事務委任契約や遺言の活用を採り上げました。今回は、終活準備をしていない場合の死後の手続きの一連の流れを確認しながら、終活準備の効果を概観します。

 死後に発生する一連の手続きは、大きく分けて「手続きのこと」と「財産のこと」があり、これらは家族や友人等の遺された人が負担します。

死後の具体的な「手続きのこと」

 まず、死後の具体的な「手続きのこと」について、「終活準備をしていない場合」の一般的な時系列の流れからご紹介します。
 あなたが亡くなった後、遺された人は、「医師が作成した死亡診断書」を受け取ります。もし、突然死や事故死であった場合には、死体検案書が発行されます。そして、「葬儀社の手配」をして、「遺体の搬送」をしてもらったのち、一般葬や家族葬、直葬等のうちの何れにするか、葬儀の方針を定めます。
 死後7日以内には、役所へ「死亡届を提出」し、「火葬許可証の申請と受け取り」を行いますが、これらは葬儀社が代行してくれる場合が殆どです。同時並行で、関係者へ訃報を連絡します。
 葬儀を行い、火葬が終了したら、埋葬許可書を受け取り、お墓が決まっている場合は納骨します。
 その後、14日以内に役所で「健康保険証や介護保険証の返却」、年金事務所や年金相談センターで「未支給年金の請求」等をします。
 多岐に亘る手続きをご紹介しましたが、遺された人はこれらをわずか2週間で対応しなければなりません。その混乱たるや、容易にご想像いただけるかと思われます。
 前回前々回のコラムでは、死後の希望を残しておくこと、そしてその実効性を担保する死後事務委任契約の重要性をご紹介しましたが、もし、あなたがそれらの終活準備をしていたら、遺された人の負担を大幅に軽減することができます。また、死後事務委任契約まで至らなくとも、例えば、葬儀や埋葬、お墓の希望、訃報連絡に備えた関係者のリストアップ、健康保険証や年金証書等の書類の保管場所の明示をしておくだけでも、遺された人の負担はだいぶ軽くなります。

図表

死後の具体的な「財産のこと」

 続いて、死後の具体的な「財産のこと」について、「終活準備をしていない場合」の一般的な時系列の流れをご紹介します。
 あなたが亡くなると、ローン等の消極財産も含めた全財産は相続人に承継されますが、何もせずに自動的に承継されるのではなく、さまざまな作業があります。
 遺された人は、相続が発生すると、相続人の確定、遺言書の有無の確認、相続財産のリストアップなどの作業に追われます。
 そして、遺言書がない場合は、相続人全員が参加する遺産分割協議で財産の分け方を決め、問題なく協議が整えば、遺産分割協議書を作成し、金融機関で預貯金・有価証券などの名義変更や払出しの手続きをしたり、法務局で不動産の名義変更等をしたりします。
 相続税がかかる場合には、納税資金を準備し、相続開始を知った日(通常はあなたが亡くなった日)の翌日から10ヵ月以内に、申告と納付を済ませます。なお、特例を用いて相続税がかからなくなる場合にも、申告は必要です。
 以上のように、財産の承継には多岐に亘る作業や確認事項があるうえ、遺産分割協議で相続人同士が揉めることや、相続税の納税資金が足りないリスク等もあり、終活準備による遺された人の負担軽減余地は実に大きいものがあります。遺言を準備し、死後は遺言執行者に手続きを任せることが最も効果的ですが、金融機関の取引明細や保険証券、固定資産税納税通知書等の役所からの通知をまとめて保管しておくだけでも遺された人は助かります。

図表

結び

 死後の流れと終活準備を対比することで、終活が及ぼす遺された人への負担軽減効果を確認いただけたかと思います。
 今回、第41回から3回にわたって、主に死後の領域に関する終活の概要をご紹介してきましたが、本コラムが読者の皆さまやそのご家族の将来の負担軽減に繋がれば幸いです。