【第41回】
2021.12.15
家族が集う年末年始。コロナ禍でのオンライン帰省も話題ですが、家族間の会話では、お墓や相続の話が出ることもしばしば。話を通じて自分自身の終活への意識が高まる高齢者もおられるようです。そこで、今回のコラムでは、知っておくと安心できる終活のポイントをご案内します。
終活というと、死亡時や死後の手続きだけを想像される方もおられますが、終活の射程はもっと広く、晩年の生活への備えが含まれます。今後のご自身の晩年や死後に、ご自身以外の家族も含めた周囲の方に生じる困りごとを先回りして考えると、自ずと終活として何をすべきかが分かってきます。
終活を円滑に進めるポイントとなるのが、晩年(生前)と死後、手続きと財産とに区分けされた「終活やることリスト」の作成です。これらをエンディングノートなどに書き出していきましょう。
あなたの緊急時に家族や周囲の方が円滑に対応したり、あなた自身が入院や介護生活を快適に過ごしたりしていくためには、持病やアレルギー、主治医の情報といった身体のことや趣味嗜好などを書き出して周囲の方に知ってもらう必要があります。自分で思っているほど、ご家族や周囲の方はあなたのことを知らないケースが多いものです。
終末期にあなたが意思表示をできなくなっていた場合、家族や周囲の方は、最期の場所や延命治療について、心理的な負担の大きな難しい決断を迫られることになります。しかし、これらを事前に決めて話しておけば、家族や周囲の方も、本人の意思を尊重した対応ができます。
保有資産等を洗い出し、特に、使える金融資産がどの程度あるのかを確認することは、今後の生活水準を考えることにも繋がります。お金が足りない場合には、不動産の売却やリバースモーゲージといった選択肢も確認しておきましょう。また、介護や認知症など、自分自身でお金を使うことが難しくなることに備えて、信託や任意後見などの財産管理の仕組みを活用していくことは、家族や周囲の方の経済的ストレスの軽減に繋がります。
死後の事務手続きで、家族や周囲の方に迷惑を掛けたくないと思っていても、あなた自身に死後の事務手続きはできません。しかし、生前のうちに必要な情報や書類などの所在を明らかにしておけば、家族や周囲の方の負担を軽減できます。以下は、生前のうちに準備できるものの代表例です。
「葬儀はどうしたいのか」「誰を呼んでほしいのか」「菩提寺の連絡先と宗派」や「遺影のための写真の保管場所」、「お墓はどうしたいのか」などが書き残してあると、家族は助かります。ただし、これらは見送る側の気持ちも考えることが大切です。家族のためによかれと思ったことが逆に作用することもあります。希望を伝えるなら理由も添えておきましょう。
相続対策には、さまざまな目的と手段がありますが、例えば、遺言書を作成し、③で洗い出した保有資産等の承継先を定めておくことは、遺された相続人の手続き負担の軽減や、相続争いの防止に有効です。また、遺言書で自身の築いてきた財産を思い通りに配分していくことは、最期まで自分らしくあることにも繋がります。なお、遺言書には主に以下のような種類があります。
以上のように、「終活やることリスト」の中身は多岐にわたります。
次回のコラムでは、これらを実現するためのエンディングノートや死後事務委任契約、遺言書の活用について概観します。