【第30回】教育資金③
2021.09.22
現在の奨学金制度は、1943年に創設された財団法人大日本育英会の奨学金事業からスタートしました。奨学金とは、憲法や教育基本法に定める「教育の機会均等」「人材育成」の理念のもと学生へ経済的支援を行うもので、現在では様々な組織や団体が奨学金制度を設けています。
奨学金の制度は大きく分けて二種類あります。
一つ目は給付型の奨学金です。様々な団体が給付型の奨学金を実施していますが、2020年4月から高等教育の就学支援新制度として独立行政法人日本学生支援機構による、給付型奨学金の支給と各学校等の授業料・入学金の免除・減額を合わせた制度がスタートしています。
二つ目は貸与型の奨学金です。こちらは支給を受けた奨学金を、一般的には学校を卒業したのち、数年~数十年かけて支給を受けた本人自身で返還していく必要があります。利子については、「無利子」のものと「有利子」のものがあります。
実際に奨学金を借りている学生数はどのくらいいるのでしょうか。独立行政法人日本学生支援機構が、奨学金の受給状況について調査しています【図表1】。
大なり小なり何らかの奨学金を受給している学生は大学(昼間部)で47.5%、修士課程で48.0%とおよそ半数にのぼります。高等学校などの卒業生のうち大学・短期大学への入学する人は年々増加しているため、「資金面で進学を断念するよりも奨学金で」と考える人も多いのではないでしょうか。
独立行政法人日本学生支援機構が行う奨学金が広く一般的に知られていますが、その他にも様々な団体が実施しています【図表2】【図表3】。
地方公共団体が実施している制度は、奨学金を受給する学生や、その保護者が当該地方公共団体に住所を持つことが条件となっているケースが多くみられます。貸与型が中心ですが、「無利子」が多い傾向にあります。また各学校でも新入生・在校生向けに様々な奨学金制度を設けています。給付型も多くありますが、成績が選考の条件となっているものが多くみられます。
各団体がどの様な制度を実施しているかは、独立行政法人日本学生支援機構のHPで簡単に検索することができます。
奨学金の受給を検討する際には、本当に「必要な額」はいくらなのかを考えることが重要です。特に貸与型では注意が必要です。貸与型で受け取った奨学金は卒業後に返還していく必要がありますので、将来の返還負担を考え、真に必要な金額の範囲内で奨学金を受けることが重要です。また、独立行政法人日本学生支援機構の場合、奨学金の返還が一定期間滞ってしまうと、個人信用情報機関に登録され、住宅ローンや自動車ローンといった他のローンを検討する際に、影響が出る場合がありますので注意が必要です。
奨学金を返還していくのは子ども自身になりますが、教育ローンであれば返済をしていくのは保護者ですので、子どもの将来負担を減らすことができます。教育ローンは大きく分けて国(株式会社日本政策金融公庫)が提供するものと、民間の金融機関が提供するものがあります。民間の金融機関から借入れをする場合は「一定の収入」もしくは「安定した収入」が条件となりますが、一方、国の教育ローンは「一定以下の収入の世帯」が対象となるのが大きく異なる点です。国の教育ローンの概要は以下の通りです【図表4】。
奨学金、教育ローンそれぞれの特徴をふまえ、親子間でよく相談することが重要です。