【第17回】住宅ローンと資産形成⑬

ローンを返済しながら資産形成している夫婦の経済的な力関係や家計管理はどうなっている?

2021.02.10

ローンを返済しながら資産形成している夫婦の経済的な力関係や家計管理はどうなっている?

 今回は、既婚者に絞った分析結果をお伝えします。住宅ローンを返済しながら資産形成をしている夫婦の「経済的な力関係」はどうなっているのか、家計を管理しているのは誰か、そして、実際に資産形成が進んでいるのはどちらの力が強くて、誰が家計管理をしている夫婦なのか。
 既婚者の皆様はご自身のご家庭と比べながら、シングルの方もお知り合いご夫婦を思い浮かべながらお読みいただければ幸いです。

※資産のミライ研究所で実施したアンケートでは、既婚/未婚について①「結婚している・パートナーがいる」、②「独身である(未婚・離婚・死別)」の2択でお答えいただいており、本レポート内の「既婚者」に関する分析結果は、①のデータを用いたものです。

経済的に対等な夫婦の金融資産は平均の1.5倍

 夫婦の経済的な力関係をどう計るかは難しい問題ですが、ここでは「年収」という客観的な数字を使うことにします。
 住宅ローンを保有する既婚世帯の夫と妻の年収を比較し、夫の年収の方が妻の年収より多い場合を経済的な力関係が「夫>妻」、夫婦の年収が同じ場合を「夫=妻」、妻の年収の方が夫の年収より多い場合を「夫<妻」として集計したところ、「夫>妻」の世帯が全体の85%と大半を占め、「夫=妻」の世帯が6.6%、「夫<妻」の世帯が8.5%という結果になりました。(図表1)

図表1 夫婦の経済的力関係別構成比構成比(持家/ローンあり世帯)

 夫婦の経済的な力関係別に金融資産の保有状況をみると、「夫=妻」の世帯が抜群に良好でした。平均保有額は1,140万円と全体平均の約1.5倍で、およそ15%の世帯が住宅ローンを返済しながら2,000万円以上の金融資産を保有しており(図表2の)、5,000万円以上保有する世帯も4.2%に上ります。

図表2 夫婦の経済的力関係別にみた金融資産の保有状況(持家/ローンあり世帯)

 一方、経済的な力関係が「夫>妻」の世帯と「夫<妻」の世帯の平均金融資産保有額は、それぞれ745万円、728万円で、いずれも住宅ローンを保有する既婚世帯の平均である769万円を下回っています。また、「夫<妻」の世帯では、6世帯に1世帯(16.7%)が保有額ゼロ、つまり金融資産を持っていません(図表2の)。

 ちなみに、住宅ローンを返済済みの世帯や借家住まいでローンを借りていない世帯も含めた既婚世帯全体で集計すると、「夫>妻」の世帯が8割を占め平均金融資産保有額は1,043万円、「夫=妻」の世帯は6%で同1,143万円、「夫<妻」の世帯は15%で同973万円(全体の平均保有額は1,038万円)という結果でした。保有額のトップが「夫=妻」世帯であることには変わりありませんが、住宅ローン保有世帯の時のような大差はつきませんでした。

 今回の結果をみると、住宅ローンという足かせがないのならともかく、ローン返済と資産形成を両立させようと思ったら、「二人でガンガン稼ぐ経済的な力関係が対等な夫婦」を目指すのが一番かもしれません。ただ、この「夫=妻」グループは、現状は6.6%と少数派であり、「そうカンタンに言ってくれるなヨ」という声が聞こえてきそうではありますが。。。

おカネが貯まる家計管理は、「夫主導」かいっそ「別々」

 続いて、住宅ローンを保有する既婚世帯に対して、「誰が家計管理を行っているか」をたずねたところ、ざっくり、「夫主導(「夫のみが管理」+「主に夫が管理するが妻も若干関わる」)」が3割、「妻主導(「妻のみが管理」+「主に妻が管理するが夫も若干関わる」)」が5割、「夫婦で半々」が1割、「夫婦別々」が1割弱となりました。(図表3)

図表3 家計の管理者別構成比(持家/ローンあり世帯)

 家計管理者別に金融資産の保有状況をみると、「妻主導」で管理する世帯より、「夫主導」で管理するか、「夫婦別々」に管理する世帯の方が資産形成が進む傾向が見られました。(図表4)
 「夫のみが管理」「主に夫が管理するが妻も若干関わる」「夫婦で別々に管理」のいずれの世帯も、金融資産の平均保有額は住宅ローンを保有する既婚世帯の平均を上回っており(860万円~930万円)、住宅ローンを返済しつつ2,000万円以上の金融資産を蓄積している世帯の比率も1割を超えています(図表4の)。

図表4 家計の管理者別にみた金融資産の保有状況(持家/ローンあり世帯)

 逆に、最も金融資産の保有状況が芳しくなかったのは、「妻のみが管理」している世帯で、平均金融資産保有額は600万円に満たず、5世帯に1世帯(20.7%)は保有額ゼロでした(図表4の)。

 もっとも、住宅ローンの有無に関係なく既婚世帯全体で集計した場合は、誰が家計管理をしていても平均金融資産保有額は900万円~1,000万円でほぼ横並びでしたので、お金が貯まる家計管理は「夫主導」か「夫婦別々」、できれば避けたい「妻任せ」—というのは、あくまでも「ローンを返済しながら」という条件付きの話ということになります。