【第16回】住宅ローンと資産形成⑫《寄り道コラム》

金融・経済用語、みんなはどれぐらい知っているの?

2021.01.29

金融・経済用語、みんなはどれぐらい知っているの?

 今回は、資産形成をしている夫婦の力関係などについてご報告する予定でしたが、前回の「ローンを返済しながら資産形成している人の金融リテラシーの状況は?」の中に出てきた「金融リテラシーポイント」について、「回答者の平均点はどれくらいだったの?」「“マイナス金利政策” とか“リバモゲ(リバースモーゲージ)”を知っている人ってどれぐらいいたの?」「認知度が高かったのはどの言葉?」といったご質問をいただきましたので、寄り道させて頂きます。

※金融リテラシーポイント‥‥下記【   】内の10個の金融・経済用語について、「言葉を聞いたことがない」→0ポイント、「言葉は聞いたことがあるが、内容はよくわからない」→1ポイント、「内容までおおよそわかる」→2ポイントとし、10の用語のポイントの合計を金融リテラシーポイントとした。全ての用語について「内容までおおよそわかる」場合が満点の20ポイントとなる。
【「マイナス金利政策」「インフレ/デフレ」「キャッシュレス決済、キャッシュレス還元」「SDGs」「老後資金2000万円問題」「リバースモーゲージ」「プライマリーバランス」「可処分所得」「プライベートバンキング」「TPP」】

20点満点で平均点は9.8点、15点以上なら優等生

 まず平均点から。今回のアンケート調査では、10個全ての金融・経済用語について「内容までおおよそわかる」場合が満点の20ポイントとなりますが、回答者全員の平均点はこの約半分、9.8ポイントでした。
 ポイント別の分布をみると、最も多かったのは7ポイントの人で(全体の9.1%)、ここを頂上とした山型の分布になっていました(図表1)。
 全体の約5割が5~10ポイントレンジに集中しており、15ポイント以上は2割弱。この上位2割弱の人たちは、相対評価で「金融リテラシー優等生」と言えるでしょう。ちなみに、満点の20ポイントの人は2.7%、0ポイントの人は1.4%でした。

図表1 金融リテラシーポイント別分布

「キャッシュレス」強し!ダントツの認知度!

 続いて、個々の用語についての認知度/理解度をみてみましょう。各用語の認知度/理解度別の構成比と平均ポイント(0ポイント~2ポイントの間になります)をまとめたものが図表2です。

図表2 用語別に見た認知度/理解度構成と平均ポイント

 構成比、平均点のどちらからみても、今回たずねた10の金融・経済用語の中で最もよく知られているポピュラーワードは「キャッシュレス決済・還元」で、およそ8割の人が「内容までおおよそわかる」と回答し、平均点は1.8ポイントでした(図表2-①)。
 これに続くのは、「老後資金2000万円問題」(「内容までおおよそわかる」人が6割弱、平均点が1.5ポイント)と「インフレ/デフレ」(「内容までおおよそわかる」人が5割強、平均点は同じく1.5ポイント)ですが、「キャッシュレス決済・還元」との間にはだいぶ差があります(図表2-②)。
 「キャッシュレス決済・還元」の強さ(?)のヒミツは、ほぼ全ての人にとって、他の用語と比べるとずっと身近で、しかも「おトク系」の言葉である点にあるのではないでしょうか。また、本アンケート調査の実施時期が2020年1月で、前年10月の消費税引き上げのタイミングで導入された「キャッシュレス・ポイント還元制度」がちょうど浸透・定着してきた頃だったことも影響しているかもしれません。

 反対に、認知度/理解度が低かった金融・経済用語をみると、「SDGs」と「リバースモーゲージ」がワースト2で、「内容までわかる」人は1割にとどまり、「言葉を聞いたことがない」人が7割前後、平均点は0.4ポイントでした(図表2-③)。「プライマリーバランス」と「プライベートバンキング」も、「言葉を聞いたことがない」人が6割弱を占め、世間一般にはまだあまり知られていないようです(図表2-④)。

 特徴的だったのが「マイナス金利政策」で、「言葉は聞いたことがあるが、内容はよくわからない」が5割超と際立って多くなっていました(図表2-⑤)。確かに、日ごろよく見聞きする言葉ではありますが(ちなみに2019~2020年の全国紙+日経新聞への登場回数は619回で、「2000万円問題」の約3倍)、正確に説明できる人は意外と少ない気がします。

亀の甲より年の功、若者への「SDGs」刺さりは本当だった

 最後に、年齢による金融・経済用語の認知度/理解度の違いをみてみます。
 初めに書いたとおり、回答者全体の金融リテラシーポイントの平均は9.8ポイントでしたが、年齢別では高齢になるほど平均点が上がり、20歳代の8.4ポイントから60歳代の11.4ポイントまで3ポイントの開きがありました(図表3の最下段)。
 一般に金融リテラシーは年をとるにつれて高くなると言われていますが、今回のアンケート結果もこの通説に沿うものだったわけです。

図表3  年齢別 各用語の理解者比率と平均金融リテラシーポイント

 用語別にばらしてみても、年齢が上がるにつれ「内容までおおよそわかる」人の比率が高まる傾向がみられました。
 ただ、年齢による認知度/理解度の「差のつき具合」は、用語によって違っていました。
 例えば、「キャッシュレス決済・還元」と「SDGs」と「TPP」は認知度/理解度の年齢差が比較的小さく(図表3の)、しかも、「SDGs」に限っては、10の用語の中で唯一若年層の方が認知度/理解度が高くなっていました(図表3の)。「若者はSDGsへの関心・意識が高い」と言われていますが、まさにそれを裏付ける結果です。

 他にも、「リバースモーゲージ」を「内容までおおよそわかる」人の比率は、30歳代までは5%台だったのが40歳代で9%、50歳代で13%まで上がるのは、自分の家のこととして考えるのはまだ早いけれど、親の家がリバモゲ適齢期に入ったと考えれば納得できる等、色々想像しながらみていくとちょっと面白かったです。