【第14回】住宅ローンと資産形成⑩《寄り道コラム》
2020.11.13
おひとり様の資産形成の現状をみる2回目です。前回は、独身男女の金融資金保有額が年齢とともにどのように推移し、資産格差がどのように変化するかをみました。今回は、実際の資産形成行動について、アンケート調査の結果もとにご報告します。
資産形成に取り組んでいるおひとり様の比率は、男女ともに65%前後と大差はありませんでした。(図表1)
既婚者の同比率は男性が75.2%、女性が72.2%なので、おひとり様は既婚者と比べると資産形成に取り組む人がやや少ないといえます。「人間、身を固めるとそれなりに蓄えについて考えるようになる」という定説(?)を裏付ける結果です。
話を「おひとり様」に戻しますと、資産形成に取り組む人の比率は男女ほぼ同じなのに、最終的に60歳代時点の平均金融資産保有額は独身女性の方がかなり高くなっている(男性1,163万円、女性1,410万円、シリーズ⑨図表1ご参照)という点が、ちょっと引っかかります。
ひとつの仮説として、一般的に、女性の方が男性よりも老後について(「老後について」に限らないのかもしれませんが)不安感を抱く人が多く、あえて「資産形成をしている」という自覚はなくても、常に無意識にちょこちょこ貯蓄しているという考え方もできそうです。
男女の不安感の違いについて、少し数字をご紹介しておきます。
こうした老後資金不安の強さから、「貯めておかねば」という潜在意識が芽生え、「隙あらば預金」が習慣になっている女性が少なくないのかもしれません。
ちなみに、男性より女性の方が老後に関する不安や心配が大きいのは、資金面に限った話ではないようです。各種調査をみると、健康や住まい、介護面から、いわゆる「終活」まで、おおよそ全てのジャンルで女性の方が「不安」と答える人が多いという結果でした。
(男女の意識差については、掘り下げれば色々面白いファクトが出てきそうなのですが、あまりのめりこむと本筋から外れて収集がつかなくなりそうなので、涙を呑んでこの辺に留めます。)
図表1でみたとおり、資産形成に取り組んでいるおひとり様の比率は男女ともに65%前後でほぼ同じでしたが、具体的な手立てには男女差が見られました。
まず、男女の違いがハッキリしているのが、資産形成におけるリスクテイク度。
資産形成の手立てとして株式や投資信託、外貨預金といったリスク資産を選択している人の比率は、定期/不定期を問わず独身男性の方が高くなっています(図表5の)。一般に男性の方がリスクをとる傾向にあると言われますが、この点はおひとり様の資産形成行動にも当てはまるようです。
もう1つの違いは、「不定期に(余裕がある時に)」国内預貯金を行っている人の比率です。
国内預貯金は、男女を問わずおひとり様の資産形成の具体策のダントツトップであり、「定期的に」国内預貯金をしている人の比率は男女全く同率の66.8%でした。
ただ、「不定期に」預貯金をしている人については、独身女性が2人に1人(50.3%)、独身男性は3人に1人強(37.4%)と差がありました(図表5)。先ほど、女性は相対的に老後資金に対する不安感が強く、「隙あらば預金」が習慣化しているのかもしれないと書きましたが、この仮説とも平仄の合う結果です。
他方、ボーナスなどが入った時にエステ、グルメ、ショッピングなどの「自分へのご褒美」消費に向かうのも、女性の行動特性としてよく知られるところ。預金派とご褒美派(消費派)とに別れるのだろうか?と思って何人かに聞き取り調査したところ、「全部は使わないよ~、貯金もするよ~」「ご褒美も預金も。比率はその時々で違う」とのお答え。(中には「御行のキャンペーン定期にも預けたよ」という声もありました。謝謝!)
ご褒美も預金も、そしてローンがある人は返済も‥‥おひとり様女性、なかなかしっかりされているようで。