【第207回】 「高額」「長期化」しやすいペアローン①
2025.09.24
住宅ローンの借入形態には、1人で借りる「単独ローン」と夫婦やパートナーと2人で借りる「ペアローン」の2つの方法が代表的な借り方としてありますが、近年、不動産価格の高騰や共働き世帯の増加を背景に、ペアローンの利用が増加しています。ミライ研のアンケート調査でも、ペアローンの利用が高まっていることが分かっています(図表1)。
では、単独ローンを利用している世帯とペアローンを利用している世帯で、世帯属性や住宅ローンの利用形態に違いはあるのでしょうか。
まず、就労状況について確認をしたところ、自身・配偶者ともに有職者のいわゆる“共働き世帯”の割合は、ペアローンでは85.9%と当然ながら高いものの、単独ローンでも58.8%と半数を超えており、共働きでありながら単独ローンを選択している世帯も少なくないことが分かりました。
(注)図表2のうち、単独ローンの配偶者・パートナーはいない世帯については、その大半が「子どもがいない世帯」であり、住宅ローンを利用して購入する物件の間取りや金額、購入タイミングも二人以上世帯とは異なってくることが想定されるため、以降のペアローンとの比較分析においては除きます
次に、住宅ローン借入時の年齢については、単独ローンもペアローンも30歳代での借入れが最も多く、半数を超えています(図表3)。次に多い年代は、単独ローンでは40歳代(24.0%)、ペアローンでは20歳代(注:18-29歳を指す)(28.8%)となっており、ペアローンの方が若い世代の利用が多いことが分かります。おそらく、「一人の収入では希望の物件に手が届かないけれども、二人の収入であれば手が届く」という理由でペアローンを利用するケースがあるものと考えられます。
さらに、「現在の世帯年収」と「住宅を購入した当時の保有金融資産額」については、分布に若干の差はあるものの、世帯年収は「700万円以上~1,000万円未満」、住宅購入時の金融資産は「1万円以上500万円未満」の層がいずれも最も多くなっていました(図表4、5)。
これらの結果から、
ことが分かります。持っているお財布の大きさはそれほど変わらないということであれば、住宅ローンの利用方法についても、違いは見られないのでしょうか。その点については、次回のコラムでお伝えします。
コラム執筆者
矢野 礼菜(やの あやな)
三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2014年に三井住友信託銀行入社。堺支店、八王子支店にて、個人顧客の資産運用・資産承継に関わるコンサルティングおよび個人顧客向けの賃貸用不動産建築、購入に係る資金の融資業務に従事。2021年より現職。主な著作として、『安心ミライへの「金融教育」ガイドブックQ&A』(金融財政事情研究会、2023)がある。ウェルビーイング学会会員。