【第205回】 エリアで見る住宅ローンのリアル②
2025.09.10
前回のコラムでは、全国的に住宅価格が上昇していること、そして住宅ローンの借入額も高額化・長期化している傾向についてご紹介しました。今回は、ミライ研が実施した調査結果をもとに、エリア別の住宅ローン利用実態について詳しく見ていきます。
まず、住宅購入者の年代についてです。調査対象は、過去5年以内(2020年~2025年)に住宅ローンの借入を開始した方々です。どのエリアでも、20代・30代の若い世代が過半数を占めており、住宅購入の中心層となっていることがわかります【図表1】。
特に近畿圏では、20代での住宅購入が約4割と、他の地域よりも若年層の割合が高い傾向が見られました。地元に就職し、親族が近くに住んでいるなど、将来的にもその地域に住み続ける意向が強い方が多いと考えられます。こうした地域性は、住宅購入のタイミングにも影響を与えていそうです。
メディアでは「新築マンションの分譲平均価格○○万円超え」といった報道が目立ちますが、実際の住宅購入者が選んでいる住居形態は「戸建て」が圧倒的多数でした【図表2】。
首都圏ではマンションの割合が比較的高いものの、全体で見ると約7割が戸建てを選択。首都圏以外では8割以上が戸建てという結果となっており、報道でよく目にする「新築マンション」は、実際には少数派であることがわかります。土地付きの住宅を選ぶことで、将来的な資産形成や家族構成の変化にも柔軟に対応できるという点が、戸建て人気の背景にあるのかもしれません。
次に、住宅ローンの借入形態について見てみましょう。単独ローンとペアローンの利用状況を比較したところ、首都圏ではペアローンの利用が約3割と最も高い結果となりました【図表3】。
ただし、ペアローンの利用は首都圏に限った話ではなく、中京圏やその他の地域でも約2割が利用しており、全国的に一定の広がりを見せています。一方で、近畿圏では単独ローンの利用が約9割と非常に高く、先ほどの若年層の購入傾向と合わせて、「若いうちから一人でローンを組む」という価値観が根付いている可能性も考えられます。
最後に、金利形態の選択傾向についてです。3大都市圏(首都圏・近畿圏・中京圏)では、変動金利を選ぶ方が7割を超えており、借入時点での金利の低さを重視する傾向が強く見られました【図表4】。
一方で、3大都市圏以外の地域では、変動金利の選択率が約6割にとどまっており、固定金利を選ぶ方が比較的多い傾向にあります。これは、住宅価格が3大都市圏と比較して押さえられているため、ゆとりある借入計画が立てやすいことや、長期的な返済計画を重視する、といった地域性が反映されている可能性も考えられます。
今回は、住宅購入者の年代や住居形態、住宅ローンの借入方法、金利タイプの選択傾向について、エリア別にご紹介しました。地域によって住宅購入のスタイルや価値観が異なることが、調査結果からも明らかになっています。
次回のミライコラムでは、年収に対する返済比率や返済期間の違い、そして各地域の傾向をまとめた分析をお届けします。住宅購入を検討されている方にとって、より具体的な判断材料となる内容ですので、ぜひご覧ください。
コラム執筆者
桝本 希(ますもと のぞみ)
三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2015年三井住友信託銀行入社。奈良西大寺支店にて、個人顧客の資産運用・承継コンサルティングに従事。2019年よりIT業務推進部にてシステム開発・保守業務に携わった後、22年より現職。ファイナンシャル・ウェルビーイングに関する調査研究・情報発信を行う。ウェルビーイング学会会員。