【第204回】 エリアで見る住宅ローンのリアル①
2025.09.03
近年、住宅市場を取り巻く環境は大きく変化しています。特に首都圏では、住宅価格の高騰や住宅ローンの借入額の増加が話題となることが多く、メディアでも頻繁に取り上げられています。しかし、こうした動きは首都圏に限った話ではありません。
国土交通省が公表する「不動産価格指数」によると、住宅価格は全国的に上昇傾向にあり、地方圏でも価格の上昇が確認されています【図表1】。これは、都市部への人口集中や土地の希少性といった構造的な要因に加え、好立地の獲得競争激化や人件費、資材費などを含む建築コストの上昇も影響していると考えられます。
実際に、同じく国土交通省が公表する「建築費指数」を見ると、2020年以降、木造・鉄筋コンクリート造を問わず、建築費が急激に上昇していることがわかります【図表2】。資材価格の高騰や人件費の上昇、さらには物流コストの増加など、複合的な要因が住宅価格に転嫁されている状況です。
こうした背景のもと、住宅購入にかかる費用も年々増加しています。住宅金融支援機構のデータによれば、土地付注文住宅の平均購入価格は首都圏で約5,680万円、マンションでは約5,801万円と、いずれも6,000万円に迫る水準となっています【図表3】。
住宅価格の上昇に伴い、住宅ローンの借入額も増加傾向にあります。加えて、返済期間も長期化する傾向が見られ、35年のローンを選択するケースが一般的になってきています。こうした状況の中で、住宅ローンの借入実態は地域によってどのような違いがあるのでしょうか。
今回、ミライ研では、住宅ローンの借入実態をより詳細に把握するため、過去5年以内(2020年~2025年)に住宅ローンの借入を開始した方を対象に調査を実施しました。調査では、全国を以下の4つのエリアに分類し、それぞれの住宅購入の概要やローンの借入方法などを分析しています。
【4つのエリア】
・①首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)
・②近畿圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県)
・③中京圏(愛知県・静岡県・岐阜県・三重県)
・④その他(上記以外の地域)
この調査では、住宅ローンの借入額や返済期間、金利タイプの選択傾向、ペアローンの活用割合など、生活者の実態に即した多角的な視点から分析を行っています。特に注目すべきは、首都圏とその他地域における固定金利と変動金利の選択傾向の違いやペアローン利用率に関する部分です。
次回のミライコラムでは、今回の調査結果をもとに、エリア別の住宅ローンの特徴や傾向について詳しくご紹介します。住宅購入を検討されている方や、将来的な資産形成を考えるうえで、地域ごとの実態を知ることは後悔しない住宅ローン活用のヒントになるはずです。ぜひご期待ください。
コラム執筆者
桝本 希(ますもと のぞみ)
三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2015年三井住友信託銀行入社。奈良西大寺支店にて、個人顧客の資産運用・承継コンサルティングに従事。2019年よりIT業務推進部にてシステム開発・保守業務に携わった後、22年より現職。ファイナンシャル・ウェルビーイングに関する調査研究・情報発信を行う。ウェルビーイング学会会員。