【第203回】 スペシャル寄稿コラム③

東証の市場改革によるTOPIXとグロース市場への影響

2025.08.27

東証の市場改革によるTOPIXとグロース市場への影響

TOPIX採用銘柄は半数近くに減少へ

 東京証券取引所(東証)の市場改革が進んでいます。2022年4月の東証の市場区分再編を契機に、TOPIXの投資対象としての機能性を高める見直しが始まり、第一段階の見直しが2025年1月末に完了しました。
 指数としてのTOPIXは、もともと東証一部の全上場会社を構成銘柄としていました。市場区分再編後は各社の選択によりプライム市場とスタンダード市場に分かれたものの、TOPIXの構成銘柄は据え置かれました。TOPIXの第一段階の見直しは流通株式時価総額100億円未満の銘柄の除外を目的としたものです。2022年10月から該当銘柄の段階的なウェイト低減を実施し、25年1月にTOPIXからの除外が完了し、2022年4月に約2,200だった銘柄数は、2025年1月末には約1,700になりました。
 これに続く第二段階の見直しでは、構成銘柄はプライム市場に加え、スタンダード市場、グロース市場の銘柄も対象となります。また、定期入替制も導入されます。銘柄の選定基準は、年間売買代金回転率は追加基準(TOPIXの構成銘柄でない銘柄)が0.2以上、継続基準は0.14以上、浮動株時価総額の累積比率※は追加基準が上位96%以内、継続基準は上位97%以内です。初回の定期入れ替えは2026年10から四半期ごとに8段階でウェイトを低減する形で行います。第二段階の見直し完了時(2028年7月)には約1,200銘柄と、2022年4月比で半数近く減少し、2025年1月末比で500銘柄減少する予定です。その後の定期入れ替えは、年1回、毎年8月最終営業日を基準に10月最終営業日に行われます【図表1】。

※市場で自由に売買されている株式の時価総額の大きい企業から順に並べたときに上位から何%にあたるかを示した比率

図表1 TOPIX見直しの流れ(イメージ図)

 TOPIXを投資対象としたETF(上場投資信託)や年金信託などの連動資産は、約110兆円(2024年3月時点)と莫大な金額です。仮にTOPIXから除外となれば、これら巨額資産から売却されるため、株価下落が懸念されます。一方、新たにTOPIXの構成銘柄に選定される銘柄には、相応の買い需要が発生することから株価上昇期待が高まります。
 TOPIX構成銘柄のうち、選定基準のボーダーライン上にある銘柄が今後もTOPIXに残り続けるためには、何らかのコーポレートアクション(有価証券の価値に影響を与える企業の財務上の意思決定)が必要になりそうです。選定基準の1つである浮動株時価総額の累積比率については、3市場の全銘柄の浮動株時価総額合計の上位97%以内に位置していることが選定の条件になります。浮動株時価総額を増やすには、政策保有株式など安定株主の保有分を減らすことも今後の選択肢として挙げられます。

東証グロース市場の「高い成長を目指した経営」と「上場維持基準の変更」

 東証は、4月22日に「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」を開催し、グロース市場に上場する企業が、継続的に高い成長を実現するための施策を公表しました。グロース市場を活性化させることが目的で、ポイントは以下の2点です。

 1点目は、「高い成長を目指した経営」の働きかけです。これまでスタートアップ企業において、新規株式公開後に企業価値が高まらず、結果的に上場自体が目的になってしまう、いわゆる「上場ゴール」問題が指摘されてきました。この問題への対応として、企業には上場後の成長状況を分析し、想定通りの成長ができていない場合にはその要因や対応策を具体的に開示するよう求める仕組みです。さらに、これら開示を年1回以上、継続的な実施を求めていることから、上場後の成長が思わしくないグロース企業には大きなプレッシャーになると考えられます。
 2点目は、上場維持基準の見直しです。現行では「上場10年経過後から時価総額40億円以上」としている基準を、「上場5年経過後から時価総額100億円以上」と大幅に引き上げます。時価総額100億円という規模は、機関投資家の投資対象となることも念頭に置いて定められた基準です。上場企業は基準を充足するために、これまで以上に株価(時価総額)の上昇や合従連衡なども意識することになるとみられます。また、機関投資家による投資先企業へのエンゲージメント(対話)を通じて、経営への提案や、非効率な経営には議決権行使などで経営への働きかけが増えることも考えられます。こうした厳しい基準を設けることで、グロース市場全体の底上げにつながっていくと想定されます【ご参考:図表2】。

図表2 TOPIXと東証グロース250指数の推移(2020年1月1日~2025年7月31日、日次)

コラム執筆者

三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社

下記サイトやソーシャルメディアでも情報発信を行っております。是非、ご覧ください!
金融リテラシーサイト
レポート・コラムページ
ソーシャルメディア公式アカウント

【ご留意事項】

  • ・当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
  • ・ご購入のお申込みの際は最新の投資信託説明書(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
  • ・投資信託は値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替変動リスクを伴います。)に投資しますので基準価額は変動します。したがって、投資元本や利回りが保証されるものではありません。ファンドの運用による損益は全て投資者の皆様に帰属します。
  • ・投資信託は預貯金や保険契約とは異なり預金保険機構および保険契約者保護機構等の保護の対象ではありません。また、証券会社以外でご購入いただいた場合は、投資者保護基金の保護の対象ではありません。
  • ・当資料は信頼できると判断した各種情報等に基づき作成していますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また、今後予告なく変更される場合があります。
  • ・当資料中の図表、数値、その他データについては、過去のデータに基づき作成したものであり、将来の成果を示唆あるいは保証するものではありません。