【第202回】スペシャル寄稿コラム②
2025.08.20
令和7年度の税制改正大綱で、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金の上限引き上げや、退職所得控除*1の適応に関するルール変更が盛り込まれました。
大きな改正点は、iDeCoの掛け金の上限引き上げです【図表1】。第1号被保険者は掛け金を最大で月額7.5万円(現行:最大6.8万円)、第2号被保険者は最大で月額6.2万円(現行:最大2.3万円)まで拠出できるようになりました。2024年12月の制度改正に続く掛け金の上限の引き上げとなります。国民年金基金連合会の資料によると、2024年12月の新規加入者数は7万2168人と前年同月比で約2倍となっており、掛け金の引き上げなどを受けた影響がでているようです。
一方、注意点も指摘されています。iDeCoを退職金より先に「一時金」で受け取る場合の税制も改正されています【図表2】。現行は、iDeCoを一時金で受け取ってから、5年以上期間を空けて退職金を受け取ると両方(iDeCoと退職金)で退職所得控除を受けられます。今回の制度改正案では、この退職金受け取りまでの5年の間隔が10年に延ばされます。iDeCoの受け取りは原則60歳以降のため、退職所得控除を両方で利用するには最低でも70歳以降に退職金を受け取る必要があり、現状で利用できる人は限られそうです。
NISA(少額投資非課税制度)では2024年の制度改正後、年間の口座開設数*2(証券会社10社)が2023年比で約1.5倍になりました。そのためiDeCoでも制度改正による加入者数の増加が期待されます。今回のiDeCoの掛け金増額などを受けて投資家の視野が広がれば国民の資産形成はより充実していきそうです。
同じく老後の資産形成として利用されている個人年金保険とはどのような違いがあるのでしょうか。
iDeCoは、国の制度に基づく私的年金です。掛け金は全額所得控除の対象で、運用益は非課税*3となり、受け取る際には「公的年金等控除」や「退職所得控除」が適用されるなど、税制面で強みがあります。自ら運用商品を選び、時間を味方につけた資産形成ができる仕組みとなっており、老後の資金準備の方法の一つに位置づけられます。一方、金融商品の特徴やリスクをよく理解した上で活用するのはもちろんですが、資金は原則60歳まで引き出せないことや、定期預金で運用した場合はインフレ下において資産の価値が目減りする場合があるなど、注意すべきこともあります。
個人年金保険は保険会社が提供する商品です。iDeCoほどの税制優遇ではないものの、保険料の一部が「生命保険料控除」として所得控除の対象になります。また、途中での解約が可能であることや、契約内容によっては万が一のときの保障があるなど保険と貯蓄を兼ね合わせたものとなります。運用は主に保険会社に任せるため、運用状況などの細かいチェックといった手間が減ることや、資産運用に不安がある人に向いているとされています。ただし、途中解約時には運用に関わらず解約返戻金が払込額を下回る場合があることや、契約時点で受け取る年金額を決める定額型保険はインフレとなった場合、資産の価値が目減りする可能性もあり注意が必要です。
【図表3】はiDeCoと個人年金保険を比較したものです。税制優遇や資産形成を重視するのであればiDeCo、保障や計画的な受け取りを重視するのであれば個人年金保険がより適していると言えそうです。また、併用することも可能であり、両者のメリットを補完し合いバランスよく老後の資金を積み立てていくことで、有効的に活用することができそうです。
コラム執筆者
三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社
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