【第199回】DC/iDeCoとNISAはライバルではなく友達?②

NISA利用者の約4割が、iDeCoも利用、もしくは利用意向あり!?

2025.07.30

NISA利用者の約4割が、iDeCoも利用、もしくは利用意向あり!?

 前回のコラムでは、資産形成のための税制優遇制度である、DC(企業型DC/iDeCo)とNISAそれぞれの利用状況と、この1年での利用状況の変化をみてきました。
 今回は、両制度の“両立状況”にフォーカスをあてて、皆さんの資産形成の状況をより詳細に分析してみたいと思います。

1. DC利用者は約6割がNISAも利用

 まず、DCを利用している人・利用していない人のNISA利用率を確認します。
 特にDCは、会社が運営する企業型DCと、個人で加入するiDeCoがあり、加入の動機や利用の自由度なども異なることから、「企業型DC・iDeCoのいずれか加入」「企業型DCに加入」「iDeCoに加入」の3ケースで比較します。

 すると、DCを利用していない人のNISA利用割合が15.9%にとどまるのに対し、「企業型DCまたはiDeCo」利用者は60.1%がNISAも利用していました。
 また、会社の制度である「企業型DC」の利用者では、約5割がNISAを利用、自ら能動的に申し込む「iDeCo」利用者では約7割と更に高いことが分かりました。

図表1 DC/iDeCoの加入状況別、NISA利用状況

2. NISA利用者のiDeCo関心も若年層を中心に高い

 続いて、NISAを利用している人のDC利用率や利用意向を確認します。
 なお、企業型DCは会社が用意している制度であるため、自ら申し込むiDeCoに関する利用率・利用意向を分析しています。

 NISAを現在利用している人におけるiDeCoの利用割合は、50代までは年齢が上がるにしたがって増える傾向にあります。
 iDeCoは所得控除などの税制優遇があるものの、60歳まで途中引き出しができない制度であり、資産を引き出す自由度が低いことが若年層の利用率に影響しているかもしれません。

 一方で、「(現在利用していないが、)利用意向がある層」も含めると、一転して若年層の方が高い傾向になっていました。18~29歳でNISAを利用している若年層において、「iDeCoを利用している/利用意向がある」人の割合は51.9%に上ります。

 iDeCoの注目の高まりは、法改正なども契機になっていると推察できます。
 2024年11月までは、会社員や公務員の方がiDeCoを始める際に、企業・団体に「事業主証明書」という書類を準備してもらう必要がありましたが、2024年12月からは本証明書の提出が原則不要になったため、iDeCoの申し込みが手軽になりました。
 また、同時期の法改正により、iDeCoに拠出できる掛金額の上限が見直されるなど、税制優遇の効果を享受できる規模も大きくなったといえます。
 国民年金基金連合会より発表された情報によると、2024年12月には、前年同月比 200%を超える 72,000人がiDeCoに加入、加入者総数は2025年5月時点で366万7,361人となっており、iDeCoの注目度もますます高まっているといえます。

図表2 NISA利用者のiDeCo利用意向

3. “両立”の考え方とは?

 では、これらの制度の両立はどのように考えればよいのでしょうか。
 制度の利用方法に唯一解はありませんが、各制度の特徴をふまえた、一つの考え方をお示しします。
 DCは一般的に税の優遇範囲が広いものの、原則60歳になるまで引き出せない制度です。一方で、NISAは税の優遇が運用益に対する非課税のみですが、引き出しに関する制約がない制度です。
 これらの特徴を踏まえると、主に老後資産はしっかりと“鍵”の掛かっているDCを活用して税優遇の恩恵も受けつつ実践し、少し先でも使うかもしれないお金は“鍵”をかけないNISAでやっていくスタイルが考えられるでしょう。
 また、年齢が上がるにつれ、①自身の将来のマネープランがだんだん実感をもって把握できるようになる、②鍵がかかっている残り期間(60歳以降受け取りまでの期間)は短くなっていく、③所得が多くなれば所得控除のインパクトも大きくなる、ことなどを踏まえ、DCの割合を増やしていく、ということもひとつのアイデアとして考えられます。口座に入れるお金の量を、それぞれウエイト調整していくイメージです。

図表3

4. まとめ ―DC/iDeCoとNISAはライバルではなく友達―

 DC/iDeCoやNISAの資産形成制度は、利用者のすそ野が着実に拡大してきています。
 この両制度は、どちらを利用するのが良いのかという議論が見受けられますが、どちらも両立している人が相応にいること、またその割合は増えてきていることが分かります。
 両制度は“ライバル関係”ではなく、お互いの長所と留意点を補い合える“友達関係”と捉えて、上手に活用することが、「令和の資産形成」における新常識かもしれません。

上記の記事に加え、より多くのデータをまとめたミライ研のアンケート調査結果

「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)より
DC/iDeCoとNISAはライバル?友達? ーNISA利用者の約4割が、iDeCoも利用、もしくは利用意向ありー
を資産のミライ研究所のHPに掲載しています。
是非、ご覧ください。

コラム執筆者

清永 遼太郎(きよなが りょうたろう)
三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員

2012年に三井住友信託銀行入社。2015年より確定拠出年金業務部にて企業のDC制度導入サポートや投資教育の企画業務等を担当。2019年より大阪本店年金営業第二部において、企業年金の資産運用・制度運営サポート業務に従事。2021年から現職において、資産形成・資産活用に関する調査研究並びにコラムや書籍の執筆、セミナー講師を務める。2022-2023年 老後資産形成に関する継続研究会委員(公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構)。2024年度よりウェルビーイング学会ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会副座長。

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