【第198回】 DC/iDeCoとNISAはライバルではなく友達?①
2025.07.23
最近、日本では資産形成に取り組む人が少しずつ増えてきています。
背景には、長寿化などに伴う将来のお金の不安や、物価の上昇などがあり、「お金の備えは自分でしっかりしておこう」と考える人が増えているようです。
この流れを後押ししているのが、「NISA」や「確定拠出年金(DC)」といった税制優遇制度です。
日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査(2024年)」によると、有価証券への投資について検討したり、興味・関心を持ったきっかけは「投資に関する税制優遇制度(NISA・確定拠出年金)があることを知った」が42.2%とトップでした。特に、20代~30代は「投資に関する税制優遇制度があることを知った」が62.3%、両制度がすそ野拡大に大きな影響を与えていることが伺えます。
そこで今回は、これらの税制優遇制度(企業型DC/iDeCo、NISA)の利用状況を、ミライ研が行ったアンケート調査結果から確認していきたいと思います。
まずは、DC(企業型DC/iDeCo)とNISAそれぞれの利用状況を確認してみます。
アンケート調査対象である約1万人のうち、資産形成に関する税制優遇制度を何らか利用している割合は26.6%となり、およそ4人に1人の割合であることが分かりました。
制度別では、DCが12.6%(グラフ上のオレンジ+青)、NISAが21.5%(青+緑)となっており、NISAによる資産形成実践者が相対的に多いことが分かります。
また、DCとNISAを両立している人は全体の7.6%(青)となりました。
これらの制度の利用・両立状況は、この1年間でどのように変化したでしょうか。
1年前の2024年1月に調査したデータと比較したところ、どの年代でも「未利用者」が減少しており、税制優遇制度を活用した資産形成が進んでいることが分かります。
特に、「DC・NISA両立」の割合がどの年代でも増えていることも特徴です。
現在資産形成に取り組んでいる人は、年間どのくらいの金額の資産形成を行っているのでしょうか。
年代別に分析すると、どの年代でも「1年あたり1万円~50万円」が最多になっています。
一方で、平均額を見ると、全年代の平均は年間123万円であり、単純計算で月額10万円程度が資産形成に回っていることになります。これは50代に向けて年代が上がるにしたがって若干増加していきます。
いかがでしょうか。
DCやNISAなどの税制優遇制度は、この1年で利用が進みました。
両制度とも、投資を始める人にとって税金面でのメリットがある制度であり、かつ最近では両制度とも制度改正※により内容が充実してきています。これらの改正も、利用者の伸びにつながっているものと思われます。
次回は、両制度を“両立している人”にフォーカスを当てて分析してみます。
※参考
◆NISAについて(金融庁)
◆DCの法改正について(厚生労働省)
コラム執筆者
清永 遼太郎(きよなが りょうたろう)
三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2012年に三井住友信託銀行入社。2015年より確定拠出年金業務部にて企業のDC制度導入サポートや投資教育の企画業務等を担当。2019年より大阪本店年金営業第二部において、企業年金の資産運用・制度運営サポート業務に従事。2021年から現職において、資産形成・資産活用に関する調査研究並びにコラムや書籍の執筆、セミナー講師を務める。2022-2023年 老後資産形成に関する継続研究会委員(公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構)。2024年度よりウェルビーイング学会ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会副座長。