【第189回】NISAの認知・利用事情②

NISAの利用意向がある人はどんな人?

2025.05.21

NISAの利用意向がある人はどんな人?

 前回のコラムでは、ミライ研が毎年1月に実施している「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」の結果から、NISAの認知度と利用率がこの1年で一定程度進んでいることを見てきました。

 今回は、NISAをすでに利用している人に加えて、現在NISAを利用していない方の「利用意向」まで含めて分析してみます。

1. およそ3人に1人が、NISAを“利用している人”もしくは“利用意向がある人”

 ミライ研の調査では、NISAを利用していないと回答した人に対し、「NISA制度を今後利用しますか」と聴取しました。
 すると、「利用済み+利用意向者」の総和は伸びている(30.8%⇒34.1%)ことが分かりました。

 一方で、「利用しない・おそらく利用しない」旨の回答者も顕著に伸びている(29.0%⇒36.7%)ことが分かります。
 NISAを利用するのかしないのか、この1年である程度はっきりさせた人が相当程度いることが伺えます。

 さらに、このデータを年代別に分析すると、18-29歳以下のNISA検討とNISA利用が最も進み、かつ、60代の「利用しない」層が顕著に多くなっていることが分かりました【図表2】。

2. 金融教育の経験やライフプランニングがカギ?

 この1年では、NISAを「利用する」にせよ「利用しない」にせよ、世間の皆さんの意向がはっきりしてきているということが分かりました。

 ミライ研の分析では、この意向に大きく関係していそうなのが、「金融教育の受講経験」や「ライフプランニング」であることが分かりました。
 続いては、この金融教育とライフプランニングの実践状況とNISAの利用意向についてみていきましょう。

 【図表3】のとおり、どこかしらの“場”で、金融教育を受けた経験がある人は、NISAの利用済+利用意向ありの割合が、未経験者に比べて大きくなっていました。
 特に、実際にNISAを活用できる年齢に達しているであろう、「短大生・大学生・大学院生・専門学校生」や「社会人」のタイミングで教育を受けた層は、NISA利用率が顕著に高い傾向がみられます。

 また、【図表4】のとおり、「ライフプランを立てている人」は、そうでない人に比べて顕著にNISAの活用が進んでいます
 自身の長期的な“家計のあり姿”を描くことで、そのプラン実現に向けたアクションとして「NISAを活用した資産形成」が選ばれているものと推察されます。

 また、ライフプランを立てていない人は、NISAの利用意向について「どちらともいえない」ではなく「利用意向なし」が最多の6割となっています。
 ライフプランを立てていない方は、NISAのように長期的な目線で資産形成をするようなものに「関心を持っていない」ということが見て取れます。

3. まとめ

 2024年の「NISA元年」を終えて、国民のNISAに関する意識や行動が大きく変化したことが分かりました。
 ここまでの調査結果から考察すると、NISAへの関心は、金融リテラシー関連の情報に接する機会を持つこと、ならびに将来のことに目を向けることが、大きなきっかけの一つになっていることが伺えます。

 豊かな人生を送るにあたり、NISAの利用は「マスト」ではありませんが、お金に関する“学び”を得ることや、自身の将来設計を立ててみることが、「人生の経営者」として長期で有利な資産形成制度を活用するマインドの醸成につながっているものと思われます。

上記の記事に加え、より多くのデータをまとめたミライ研のアンケート調査結果

「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)より
NISAの認知・利用事情 ~NISA元年を終えて、世間への浸透度はどう変化した?~
を資産のミライ研究所のHPに掲載しています。
是非、ご覧ください。

コラム執筆者

清永 遼太郎(きよなが りょうたろう)
三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員

2012年に三井住友信託銀行入社。2015年より確定拠出年金業務部にて企業のDC制度導入サポートや投資教育の企画業務等を担当。2019年より大阪本店年金営業第二部において、企業年金の資産運用・制度運営サポート業務に従事。2021年から現職において、資産形成・資産活用に関する調査研究並びにコラムや書籍の執筆、セミナー講師を務める。2022-2023年 老後資産形成に関する継続研究会委員(公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構)。2024年度よりウェルビーイング学会ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会副座長。

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