【第163回】生活満足度を高める住まい選びとは?
2024.11.06
ミライ研で実施した調査内容をもとに、今回のコラムでは「生活満足度」をベースとした居住形態について考察していきたいと思います。前回のコラムでは、住まいの終着点を「持ち家」としている方が多いことがわかりましたが、賃貸・持ち家それぞれの居住形態でそこに住まう方の生活満足度にはどのような違いがあるのでしょうか。
初めに「生活満足度」についてですが、今回の調査では「ウェルビーイング」に資する5つの項目(キャリア・ソーシャル・ファイナンシャル・フィジカル・コミュニティ)を現在・将来それぞれのスコアをヒアリングし、その平均値を「現在の生活満足度」と「将来(5年後)の生活満足度」として算出しています。まずは年代別での結果をみてみましょう【図表1】。
20歳代は現在(4.90)・5年後(5.41)と、現在・過去どちらの生活満足度も高いことに加え、5年後への期待感が全年代で最も高い結果となりました。逆に30歳代から50歳代では、20歳代と比較して現在・5年後の生活満足度は劣後しています。60歳代では、5年後の生活満足度が現在を下回るものの、現在の生活満足度が全年代の中で最も高くなる結果となりました。
一般的な目線として、20歳代では新たなライフステージ到来への期待感、30歳代以降では公私双方様々なライフイベントに奔走する現実的な目線、60歳代の退職時期を迎え今後の不安は持ちつつも足元の安定感、と各年代の事情が生活満足度に反映されていることが伺えます。
続いては、直近3年以内の住み替えを踏まえた住居形態別の生活満足度を見てみます【図表2】。結果を見ると、住み替えを行っている層は、総じて5年後の生活満足度への期待値が高い傾向がありました。また、個別に見ると直近3年以内に「賃貸→持ち家」に住み替えた「念願のマイホーム取得層」が、現在・5年後ともに生活満足度が最も高い結果となりました。その一方で、マイホーム取得層の未来の姿となる「住み替えなし(持ち家)」層の値を見ると、現在・5年後ともに、思い描くほどの生活満足度になっていないシビアな現実も確認できました。マイホームを新たに取得することで足元の生活満足度として大きな効用があることが推察されますが、その高揚は長期的に続くものではないといった側面も同時に見えてくることとなりました。
最後に、過去3年間で住まいを替えず、今後3年間も住み替え予定のない、「ずっと賃貸派」と「ずっと持ち家派」の2グループの生活満足度が、年代によってどのような変化があるのかを分析しました。すると、双方20歳代では同水準であるものの、「ずっと賃貸派」では年代が上がるにつれて生活満足度が僅かに減少していることがわかりました。その一方で、「ずっと持ち家派」では、年代が上がるにつれて生活満足度が向上しており、両者を比較した際に、逆の動きとなりました。住居形態によらない年代別の生活満足度では、20歳代と60歳代で生活満足度が高いことがわかりましたが、住居形態を踏まえた年代別の生活満足度ではまた、異なった傾向となることも分かりました。
この結果から、年代が上がり退職後の生活に対する解像度があがるほど、自己所有の住まいがある安心感は、生活満足度を下支えする一つの要素となり、「ずっと持ち家派」では年代が上がるにつれて、生活満足度が高くなったと推察することもできるかと思われます。
居住形態は、各々のライフプランやライフスタイルなどによって異なる部分ですが、その居住形態が生活満足度に与える影響をみてみると、年代によって異なる特徴があることがわかりました。
とはいえ、生活満足度に影響を与える要素は居住形態だけ、ということでもなさそうです。次回のコラムでは、生活満足度を高める重要な要素について解説していきたいと思います。