【第9回】住宅ローンと資産形成⑤《寄り道コラム》
2020.08.06
50歳代や60歳代になれば、住宅ローンを返し終わった人や、今まで貯めてきたお金で(住宅ローンを利用せずに)家を買った人がいてもさほど驚かないけれど、40歳代以下の若さで既にローン返済済み、あるいは元からローンを借りずに自分の家を保有できている人って、いったいどんな人?と思って、アンケートデータを見てみました。
まずは年収データを確認しました。
40歳代以下の「持家/ローン返済済み世帯」の世帯年収は761万円。相対的にみれば高いですが「持家/ローンあり世帯」(750万円)とさほど変わりません。同じく40歳代以下の「持家/ローンなし世帯」の年収は408万円で、「借家・親の家等に同居/ローンなし世帯」(401万円)と最下位を争っています。(図表1)
データを見る限り、若くして家を持っていてローンはない人の正体は、単純に「リッチな人」というわけでもなさそうです。
そこで、アンケートの基本項目の結果から、「40歳代以下で家を持っていてローンがない人(返済済みの人と、元から利用していない人)」の特徴を集めてみたところ、
・持家/ローン返済済み世帯は、地域でいうと近畿圏、中京圏に比較的多く、職業別では会社員や会社役員・経営者、公務員が多く、既婚者が多い
・持家/ローンなし世帯は、中京圏と地方に多く、パート・アルバイトと自営業の人が多く、独身者が多い
—ことがわかりました。(図表2~図表4)
若くして住宅ローンを返済済みの人については、首都圏と比べ住宅価格が安い、言い換えれば元々のローン借入額が少ない近畿圏や中京圏に住んでいることや(図表2)、会社員、会社役員・経営者、公務員といったいわゆるサラリーマンで(図表3)、安定した定期収入があるので計画通りに着々と返済を続けやすかったことが、早期完済につながった可能性があります。もっとも、サラリーマンが多いのはローン保有者も同じなので、職業よりも居住地域の方が貢献度は高そうですが。
更に、住宅ローン返済を終えた人は、まだローンを抱えている人と比べ、
・住宅購入時の頭金が多め=総返済額が少ない
・購入時の親からの支援も多め=自己負担が少ない
・年収に占める返済額の割合も高め=「さっさと返す!」をモットーに返済重視の家計運営をした人が多い
—など、返済が進みやすい条件も揃っていました。(図表5)
若くして住宅ローンを返済済みの人は、「返し終わるべくして返し終えた」と言えそうです。
続いて、若くして持家、しかも元から住宅ローンを利用していない人について。
すぐに思い浮かぶのは、「親が死亡して実家を相続」、「超お金持ちでマンションをキャッシュ買い」といったケースですが、住んでいるのが地方や中京圏で(図表2)、仕事は自営業(≒家業を継いだ人)やパート・アルバイト(≒いずれ継ぐけれどその前にアルバイト生活をしている人)が多く(図表3)、そして年収は平均でみると決して高くない(図表1)—などの特徴からすると、地元で家業を継ぐのと引き換えに親が家を買ってくれた、親の家の敷地内に建ててくれた、あるいは親の家を譲り受けた、そんなパターンが意外と多いのではないでしょうか。
半数以上が独身者なので(図表4)、「家を建ててやるから結婚して店継げやぁ!」的な世界もあるのかもしれません(筆者が遠い昔 家庭教師をしていた少年が、数十年後、まさにこのパターンとなりました)。