【第158回】スペシャル寄稿コラム①
2024.09.25
過去2回にわたって「ミライ研」の読者の方に向けて一風変わったNISAのお話をしてきました。
「インデックスファンドを少額からコツコツ積み立てていきましょう」といったアドバイスにはもちろん賛成ですが、皆が20代で30年の積立ができる方ばかりではないですよね。すでに一定程度の資産をお持ちだったり、20年や30年の長期積立に抵抗感を感じる方であったりしても、今回の新NISAは積極活用する意義があると思います。
また、つみたて投資枠を先に埋めて、それでも余力のある人だけが年240万円までの成長投資枠を使うのが定石のように言われますが、そんなルールはありません。あくまで「買いたいファンド」から決めるべきです。
もし、つみたて投資枠には買いたい、買うべきと思えるファンドがなければ、NISAは成長投資枠しか使わないということでも良いのです。成長投資枠は積立で使うこともできるので、前回ご紹介したような「未来のリーダー企業」に期待するようなファンドを、月20万円の積立で5年かけて成長投資枠上限の1,200万円まで買っていくといったアイデアです。
月20万円以上の投信積立ができる方は多くないかもしれませんが、もし月20万円以上の積立意向があるのなら、無理に魅力を感じないファンドをつみたて投資枠で積み立てるのでなく、課税口座(特定口座)で同じファンドを買うということを検討すべきかもしれません。
なぜなら、非課税のNISA口座よりも25%以上高いリターンがあれば、税金を払ってでもそちらの方がお金は増えているのです。世の中は「NISAがオトク!」という話ばかりで、あまり言われないことですが、これは事実です。
たとえばNISA口座で100万円の元本に100万円の利益が出て200万円になるのと、課税口座で25%増しの125万円の利益が出て225万円になっていることは同じことですよね。125万円の利益は税引後100万円(復興特別所得税を除く)なのですから。
つまり、「とにかくNISAを使い切らねば!」から考えるのではなく、自分にとって必要と思える、「長く付き合えるファンドは何か?」から考えることが何より重要です。
一般に、日々の変動が小さく上昇していったファンドが「効率的なファンド」として評価されます。しかし投資信託の積立の場合、実は積立期間中の「軌跡」の方がより大切です。
図1のファンドはまったくブレることなく上昇しており、確かに素晴らしい推移です。しかしそのファンドに毎月1万円ずつ60ヵ月(5年)積立をしていった元本60万円の結果は、図2の結果に負けています。図2のファンドは積立中の前半はフラットに推移し、後半に盛り返していますが、前半に安い値段で多くの口数を「仕込んで」いたことが奏功しているのです。
それがよりはっきり出ているのが、前半ずっと下落していった図3のファンド。後半になって切り返し、最後にようやくスタート時点と同じところに戻って終わっていますが、最終的な評価額は図2よりも高い金額です。これは前半の下落していく過程で、安い値段でたくさんの口数を仕込んでいたことが、後半に「ターボ」のように利いた結果です。
投資信託の積立を考える場合は、ぜひこのことを念頭に置いてファンド選びをすると良いと思います。長期での「右肩上がり」を信じで行う積立においては、「途中での下落は当然のこと。でも安い値段で口数を仕込めるチャンスでもあるんだ」と思えるようになれば、きっとNISAに限らず長期にわたる投資を成功させられることでしょう。
NISAをどう使うかの具体論については、私の会社が運営するウェブサイト「20年後ラボ」の中にも詳しく説明してあるので、興味を持たれた方はぜひ一度ご覧になってみてください。
◆20年後ラボ トップページ ◆20年後ラボ ファンド(投資信託)選びの勘所
筆者プロフィール紹介
日興アセットマネジメント株式会社 マーケティンググローバルヘッド
今福 啓之(いまふく ひろゆき)さん
1990年野村證券入社。支店営業、研修部、金融法人部を経て2000年にフィデリティ投信入社。
2007年に日興アセット入社。日本証券アナリスト協会検定会員。