【第156回】スペシャル寄稿コラム①
2024.09.11
同じ三井住友トラスト・グループの資産運用会社である日興アセットマネジメント株式会社(以下、日興アセットマネジメント)の今福さんにご登場いただき、「NISA」について3回シリーズで詳しく語っていただきます!!
今年から新しくなったNISAが話題ですね。私は投資信託を運用する会社の社員なので嬉しい限りです。しかし「ミライ研」の読者には、もう一歩先、つまり「具体的にどう活用すべきか」を考えている方も多いのではないでしょうか。または、試しに少しだけ始めてみたという方も多いかもしれません。
新NISA制度の大枠を整理します。年120万円、毎月で割ると月10万円までの投信積立ができる「つみたて投資枠」と、それとは別に年240万円までの投資ができる「成長投資枠」があり、ひとり当たりの投資元本の上限は1,800万円(ただし「成長投資枠」は1,200万円まで)です。
そして将来売却をするときなどに、その投資元本から生じた利益に通常かかる約20%の税金が非課税になるというのがNISAです。
2つの枠をどう使うかの唯一の「正解」はありませんが、いくつかのケースを示してみます。まずは「最短で埋める」ケースから。
つみたて投資枠に上限の年120万円、つまり月10万円の積立、成長投資枠に上限の240万円を毎年入れていくアイデアです。すると「ケース1」の絵の通り、5年で1,800万円の上限に達します。2つの枠ともに最短で埋め切っています。
積立は一般に長い時間をかけるのが良いこととされますが、最速で投資してしまって「そのあと」の方を出来るだけ長くするというのは、実は合理的な考え方といえます。なぜなら、長年に分けて積立をしたとしても、その最後の方のお金はまだ十分に運用されていないわけですから。
ただひとつ気になるのは、この5年間という比較的短い期間に1,800万円ものお金が投じられていることです。あとから振り返った時に、この5年間が投資タイミングとしてどうだったか、という話ですね。
でも、こればかりは事前には分かりません。今の株価が割高かそうでないかを考えることは重要ではありますが、最速で入れてしまって、その5年間が割高だったのか割安だったのかなど気にならないくらいに大きな利益の状態で売却し、非課税で全額を受け取れれば最高!という考え方は決して間違っていません。
このケース1の半分が、「ケース2」の上の絵です。つみたて投資枠は半分の5万円、成長投資枠も年間上限の半分の120万円です。そうするとケース1の倍の10年で1,800万円が埋まります。先ほど指摘した「投資タイミングが5年間に集中してしまう」という点が気になる人も、これなら問題なさそうです。
「ケース2」の下の絵は、つみたて投資枠は5万円だが成長投資枠は年間上限の240万円のままのパターンです。
240万円の方については、リスク度合いのあまり高くないバランスファンドなどを毎年240万円ずつ5年かけて、成長投資枠の上限1,200万円まで買っていくことをイメージしています。
「成長投資枠」という名前だからといって、必ずしも高いリスクを取る必要はありません。もし手元にまとまったお金があり、預貯金に寝かせておくのもどうか、でも株式100%の投資信託を買うような性質のお金ではないという場合には、少しマイルドな投資信託を成長投資枠で年に一度、何らかのタイミングを決めておいて、240万円分買う。5年続けると成長投資枠の上限1,200万円を使い切ることになります。保守的なお金というのは誰にもあると思いますから、一度考えてもいい手法だと思います。
NISAをどう使うかの具体論については、私の会社が運営するウェブサイト「20年後ラボ」の中にも詳しく説明してあるので、興味を持たれた方はぜひ一度ご覧になってみてください。
◆20年後ラボ トップページ ◆20年後ラボ ファンド(投資信託)選びの勘所
筆者プロフィール紹介
日興アセットマネジメント株式会社 マーケティンググローバルヘッド
今福 啓之(いまふく ひろゆき)さん
1990年野村證券入社。支店営業、研修部、金融法人部を経て2000年にフィデリティ投信入社。
2007年に日興アセット入社。日本証券アナリスト協会検定会員。