【第149回】令和の住み替え事情より③
2024.07.17
これまでのコラムで、過去3年以内に住み替えた方(実態面)、今後3年以内に住み替えを予定している方(意識面)について解説してきました。今回のコラムでは少し視点を変えて、過去3年以内にも、今後3年以内にも住み替えない(予定もない)方に、焦点を当ててみていきたいと思います。
【第147回コラム】の再掲となりますが、今回ミライ研で実施したアンケート調査では、時系列として、過去の住まい(3年前)・現在の住まい・未来の住まい(3年後までの予定)について伺うことで、その間の住み替えを含む住居形態の変化を捉えることができるような構成としています【図表1】。
これまでのコラムでは、そのうち「過去3年以内に住み替えを行った方」、「今後3年以内に住み替えを予定している方」に触れてきましたが、反対に過去も住み替えず、今後も住み替える予定のない方については、どれくらいいらっしゃるのでしょうか。その割合について、過去から未来への時系列における住み替えの選択状況を、年代別に見てみましょう【図表2】。
「過去は同じ住まい、今後も同じ住まいを予定」と回答している、過去も今後も住み替え(予定)なしの方の割合は、20代(18歳-29歳)では、34.9%と最も低く、30代で50.0%、40代で、66.4%、50代以降は80%超と、これまでの住み替えコラムで見てきたグラフより30代~50代での傾斜が大きいものとなりました。
20代では卒業や就職、結婚等を経て、過去3年間・今後3年間のどこかで住み替えを行う可能性が高くなっていることはこれまでのコラムからも同様の傾向となりました。一方、50代では打って変わって、過去も今後も住み替え(予定)なしと回答している方の割合が一段と増加し、以降はその増加率も一定となっています。反対に30代では過去も今後も住み替え予定のない方と、そうでない方(過去か今後で少なくとも1度は住み替えを行った、もしくは予定している方)で割合が半々となり、その後40代では、住み替えをしない方が15%程度増加しています。この調査結果から、基本的には30代~40代にかけて50代以降を長期的に見据えて居住環境を固めていこうとされている方が、全体としては多いということが推察できます。
長期的な住居選択における転換点となりそうな年代の30代・40代の方で、過去も今後も住み替え予定のない方は、どういった理由で住み続ける選択をされているのでしょうか。現在の住居形態を「賃貸」「持ち家(自己所有)」に分けて、その理由について伺ってみました【図表3・4】。
30代での住まいの理由は、賃貸・持ち家の方に限らず「住環境」や「家族構成の変化」が上位になっていますが、特徴的なのは、持ち家にお住まいの方の理由、第1位が「終の棲み処と考えた」(22.2%)とっている点です。40代での結果も30代同様、持ち家にお住まいの方の理由、第1位は、「終の棲み処と考えた」(26.0%)となり、回答者のうちおよそ5人に1人が、30代の時点から現在の住居を、最後の住まいと考えているということがわかりました。
公開済みのレポート「令和の住み替え事情−住まいの高額化時代における選択は?−」の中では、過去3年以内に住み替えを実施した方や、今後3年の間に住み替えを予定している方に、その住み替え理由を伺っています。その結果と比べても、住み替え予定のない30代・40代の方が、現住居を「終の棲み処」と考えている割合は、10%近く高くなっており、早いうちから住まいを長期的に捉える意識が高くなっている様子が伺えました。
ここまで全3回で「住み替え」をテーマとして、住み替えを行った方、住み替えを予定している方、住み替えない方を軸に住まいの選択状況を見てきました。調査結果からは、各年代において生じる「目の前にあるライフイベント」にどう対応していくかという現実的な目線から、自身にとっての住居形態に向き合っていることがうかがえました。
何を重視し、何を優先するかは極めて各人の判断に委ねられる部分ですが、本コラムが、人生100年時代における「我が家の形態に合った住まいのあり方」の吟味・検討の際の一助になれば幸いです。