【第111回】令和の“住まい”と住宅ローン事情
2023.07.05
前回のコラムに引き続き、ミライ研レポート「令和の“住まい”と住宅ローン事情」で取り上げたデータについて考えてみたいと思います。
今回の調査では、住宅ローンを利用して自宅を購入した人に対し、「住宅ローンの返済期間(当初の設定期間)」と「金利形態」を尋ねました。
「返済期間」については、全年代では「25年以上~35年未満」が約4割、「35年以上」は約2割、という結果でしたが、30代に注目すると「25年以上~35年未満」が4割という点は全年代と変わらないものの、「35年以上」も4割(39.5%)を占めており、この比率は全年代平均の2倍となっていることがわかりました【図表1】。
「金利形態」については、本アンケート調査(過去3回実施)で、初めて「単独の設問」として尋ねたものですが、全年代では変動金利が約6割、固定金利は3割強、変動と固定の組み合わせが1割弱と、「変動金利が主流」の構図が確認できました【図表2】。
年代別に変動金利の利用率を見ていくと、20代で64.4%、30代で66.3%となっており、若年層で利用率が高くなっていることがうかがえる結果となっています。
また、「金利形態」と「借入金額(当初設定額)」のクロス分析を行ったところ、住宅ローンを現在利用中している人(1,154人)について、全体の変動金利の利用率と借入金額区分別の利用率とを比較してみると「借入金額3,000万円」を境に変動金利の利用率が上昇していることが確認できました。具体的には、「借入金額区分2,000万円~3,000万円未満 ⇒ 変動金利利用率は55.0%」より大きな金額区分の変動金利の利用率は順に62.4%、70.2%、64.3%と「6割から7割」に上昇しています【図表3】。
住宅ローンにおける変動金利の基準金利は、長らく店頭表示金利ベースで年2.475%の水準が続いています。適用金利(各金融機関の金利優遇対応を織り込んだ金利)は、インターネットなどで確認をすると2023年6月時点で実勢で年0.5%~1.0%の水準であり、歴史的にも極めて低い水準です。一方、現在の固定金利水準も、過去の金利の変遷から見て極めて低い水準(返済期間35年で実勢は年1.2%~2.0%)です。
住宅価格が高騰してきていることを背景として、住宅取得時に高額の借入金額を設定するケースでは、変動/固定双方の当初返済額(月額・年額)などを見て「変動と固定の差分」が「家計の逼迫感」に及ぼす影響を勘案し金利形態を選択しているのではないかと考えられます。
参考として、前提(借入金額:3,000万円、返済期間:35年、変動金利でも期間中の金利変動がないものとした)をおいて新規借入の試算を行ってみた結果が以下です(ミライ研にて試算)【図表4】。
「変動金利は金利上昇局面において返済負担が大きくなる」というリスクは認識しているものの、返済開始当初において「(金利上昇リスクはあるものの)目先の返済金額は可能な限り抑えておきたい」との気持ちが高まる分水嶺が「借入金額3,000万円ライン」ではないかと考察しています。