【第109回】安心ミライへの「資産形成」ガイドブックQ&Aより
2023.06.21
現在50歳代の人はおおむね1960年代に生まれた世代です。日々豊かになっていくことが当たり前の高度成長期(1954〜1973年)に育ったこともあって、戦中・戦後のモノ不足を経験した世代とは感覚にギャップがあり、若い頃には「新人類」などと呼ばれました。
この世代の特徴は、3つの点で「最後の世代」であるということです。
現在50歳代の人たちの中核は、バブル景気に沸く1990年前後に社会人となった「バブル世代」です。入社後しばらくは、「24時間戦えますか?」のCMでおなじみの栄養ドリンクを飲みつつ長時間労働にいそしみ、勤務時間外にも接待ゴルフや接待麻雀で縛られるのが当たり前という日々でしたが、その代わり所得面ではバブルの恩恵を存分に受けました。【図表1】をみると、初任給が10年間で5万円以上上がった時代に就職し、その後も数年間給与が上がり続けたことがわかります。
新車やブランド品をためらわずに買い、休暇のたびに海外旅行に出かけ、1年前からクリスマスの高額ディナーを予約するなど、とにかく積極的でパワフルなこの世代の消費行動は、こうした恵まれた雇用所得環境のもとで生まれたといえるでしょう。
この世代は、1986年の男女雇用機会均等法施行後に就職した最初の世代ですが、男性と同じように働き続ける女性はまだ少数派だったようです。この世代が20歳代の頃の女性有業者比率は62.9%でしたが30歳代になると58.1%へと低下、とりわけ正規職員比率は47.3%から27.2%へと大きく低下しました。平均初婚年齢が25歳台、第1子出産年齢が26〜27歳であった時代であり、結婚・出産のタイミングで退職する(少なくとも正社員は辞める)という、今となっては死語の「寿退社」が少なくなかったと考えられます。
この世代の20歳代時点の平均貯蓄残高は348万円と、10歳下の世代より25万円低くなっています。旺盛な消費意欲を発揮した裏返しでもあるのでしょうが、「若いころから頑張って資産形成した」とは言えそうにありません。
しかし、その後の貯蓄の積増しはまずまず順調だったといえます【図表2】。
理由としては、40歳代まで賃金が大きく伸びていたこと【図表3】が大きいでしょう。
バブル崩壊や大手金融機関の破綻、リーマンショックなどを経て30歳代以降にはこの世代の雇用所得環境にも陰りが出始めましたが、正規雇用者比率が高いこともあって、平均値でみると下の世代ほど深刻な事態には陥らなかったといえます。
また、20歳代の頃から資産形成を始めていた人には、株高・高金利の恩恵もあったでしょう。
足元50歳代時点の貯蓄残高は1,429万円であり、今後も同じペースで積増しを続けた場合、60歳代時点の予想残高は1,814万円となる見込みです【図表2】。10歳下、20歳下の世代の60歳代時点の予想残高よりは心持ち余裕があるものの、老後資金目安額である2,000万円を確保にはもうひと頑張りといったところでしょうか。