【第80回】令和の「資産受け継ぎ事情」その②
2022.11.16
前回のコラムでは、少若多老の時代における「資産の受け取り方」について、資産のミライ研究所のアンケート調査から、相続や生前贈与を受けた経験の有無、受けた年齢についてご覧いただきましたが、今回は続編として、「相続」に焦点をあて、相続時の「資産の規模」「資産の形態(金融資産、不動産など資産種別)」についての調査結果をご紹介します。
三井住友トラスト・資産のミライ研究所(以下、ミライ研)が実施したアンケート調査(2022年 対象年齢20歳~69歳)において、「相続を受けたことがある」と回答された1,766人に対して、相続した資産の規模について尋ねたところ、【図表1】の結果となりました。
相続資産額の全体平均は2,346万円となりました。世代別の平均値をみてみると、相続資産額1億円以上の比率の多寡によって、平均額にも差が生じているようです。各年代の回答者数が大きくないこともあり、相続資産の高額者比率が年代別の平均額の多寡に影響していると考えられます。
ただ、受け継いだ資産の平均額の大小は関心を集める「数字」ではありますが、その起点が「相続」であることもポイントです。相続時に年齢が若くとも「1人の相続人」として資産を受け継ぎますので、「相続時年齢の老若」に関わらず、相応の相続資産規模になっていると考えられます。
また、相続した資産の規模と合わせて「形態(金融資産、不動産など資産種別)」についても尋ねています【図表2】。
相続した資産種別に「現預金」が含まれていた方が約7割、不動産(住居)、不動産(土地)などが含まれていた方がそれぞれ約4割という結果になっています。
年代別の回答分布をみてみると、40歳代以降では現預金が約6割~7割、不動産(住居・土地)が3割~4割となっています。20歳代・30歳代では、現預金は6割~7割で全体平均とほぼ同じ比率ですが、不動産(住居・土地)の比率は全体平均よりも低い比率になっています。
これは、ミライ研のアンケート調査の別の設問で「誰からの相続か」を調査していますが、20歳代・30歳代においては実祖父母・実父母からの比率が双方とも高く、40歳代以降では実父母からの相続の比率が7割以上だったことが確認できていますので、実祖父母からの相続資産種別としては「現預金」のケースが多く、実父母から相続する資産種別には「現預金」とともに「不動産」も受け継ぐケースが多いのではないかと考えています。
日本の社会構造をみると少若多老(若年層が少なく高齢層が多い)が顕著となってきています。少子化により若年層は兄弟姉妹の数が少なく一人っ子のケースも多いと考えられます。現在の若年層の将来を想像してみると、職務のジョブ化や労働の流動化、副業・兼業化などの進展に伴い、同じ企業や組織に所属し続け、その中で右肩上がりの収入曲線をイメージしていくような単線的なライフステージは少数派になってくるかもしれません。一方で、世代間の資産承継という観点では、「大相続時代」を迎えることになりますので、自分の上の世代からまとまった資産を受け取るケースが増えることも考えられます。
例えば、図表1の「相続資産の平均額」規模で資産を受け継いだと想定しますと、ご自身の「老後資金2,000万円問題」に対する不安は和らぐように思いますが、同時に、ご存命の父母世代の「老後資金」についての責任の増大や、不動産(土地・住居など)の相続があれば、その管理やリフォームなどに関する支出についても考えていく必要が生じてくるかも知れません。「相続」は資産だけを受け継ぐのではなく、家族・親族の関りの中で、「役割や責任」も受け継ぐものとも考えられます。
受け取った資産を自身のライフプラン、マネープランの中で、どう位置付け、管理していくのか、また、それを自身の老後資金やライフイベントにどう活用していくのか、に対応していく観点で、相続時における「ライフプランやマネープランの策定(もしくは見直し)」が、今後、一層重要になってくると考えられます。