【第79回】令和の「資産受け継ぎ事情」その①
2022.11.09
「2025問題」というワードを目にする機会が増えてきているようです。これは、来る2025年において、日本の人口構成で最も厚みを持つ「団塊の世代」(約800万人)全員が75歳以上に到達し「後期高齢者」となることによって、社会にあらわれる様々なインパクトのことを指します。
団塊の世代のみなさんは、第1次ベビーブーム期に生まれ、さまざまな分野で日本の成長を牽引してきました。この世代全員が75歳以上となることで、総人口(約1億2500万人)のうち、後期高齢者人口は約2200万人に達することから、「国民の5人に1人は後期高齢者」という時代になってくるものと予測されています。
一方、若い世代に目を向けますと、1990年の出生率「1.57ショック」により、厳しい少子化の現状が強く認識されるようになったものの、最初の総合的な少子化対策である「エンゼルプラン」がまとめられたのは1994年、少子化社会対策基本法が制定されたのは2003年であり、1970年代から整備された高齢者向け社会保障制度と比較すると、少子化対策は今後の改善に期待せざるを得ない状況です。今回は、こういった「少若多老」の時代における「資産の受け取り方」について、データから考察してみたいと思います。
相続というと縁遠いと感じる人が多いかもしれませんが、実は誰しもが1度、もしかしたから2度以上経験するかもしれない身近な問題になってきているかもしれません。日本はこれから「大相続時代」に入ります。2025年問題の1つは、この「大相続」であり、これから10~20年内に高齢者が保有する多くの金融資産や不動産が、子世代以降に引き継がれていきます。
今回、ミライ研の1万人アンケート調査(対象年齢20歳~69歳)では、令和の資産「受け継ぎ事情」を探るべく、資産を受けとる側の実態を調査しました【図表1】。
11197人からの回答のうち、「生前贈与を受けたことがある」「相続を受けたことがある」への回答を「受贈経験あり」とし、年代毎に、受贈経験比率をみてみると、20歳代:10.9%、30歳代:11.7%、40歳代:14.4%、50歳代:28.4%、60歳代:46.7%、と年齢が上がるにしたがって受贈経験比率も上昇しています。特に、40歳代から50歳代でのアップ、50歳代から60歳代での大幅アップが特徴的です。「想像していたとおり」と思われる結果ではありますが、数字としてみることで、「相続・贈与」に身近になってくる年齢の確認ができたように思われます。
今回のアンケート調査では、「受贈経験の有無」と「受贈を受けた年齢」だけでなく、受贈それを「どなたから」「どんな資産を(金融資産、不動産など資産種別)」「どれくらい」受け取ったかを調査しました。
まず、生前贈与を受けたことがある方797人に、どなたから受贈されたかを尋ねたところ、【図表2】の結果を得ました。
また、相続経験のある方1766人を対象として、どなたから相続されたかを尋ねていますが、結果は【図表3】となりました。
生前贈与を年代別にみてみると、20歳代の受け方としては実祖父母からの比率が高く、30歳代以降になると実父母からの受贈比率が高まることがわかります。一方、相続の方は、20歳代・30歳代で実祖父母・実父母からの比率が高く、40歳代以降では実父母からの相続の比率が7割以上を占めていることが確認できました。
次回は、「令和の受贈事情 その②」として、資産の受け取り方でも「相続」に焦点をあて、受け取った「資産形態(金融資産、不動産など資産種別で)」「資産規模」についての調査結果をご覧いただきます。